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№1871 同一労働同一賃金って?

№1871 同一労働同一賃金って?

 同一労働同一賃金の議論が近頃やかましい。同一労働同一賃金というのは職務内容が同一または同等の労働者に対し同一の賃金を支払うべきという考え方をいう。確かに、同じ仕事をしているのに正規雇用と非正規雇用との賃金格差は当たり前のようになっている。日本ではだいたい6割ぐらいの格差があるのでは無いかと言われている。

 労働者の待遇は賃金だけではない。諸手当や福利厚生など様々な条件があり、賃金はその一つでしかない。同一労働同一賃金というはその中の「賃金」について論じたものだ。しかし、同一労働といっても同一をどのように判断するかはかなり難しい。そのため、法律の世界では客観的にみて不合理な差別を禁止するという形で現れている。

 労働契約法20条は無期雇用契約と有期雇用契約との間で「労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度・・・当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。」としている。パートタイム労働法8条、同法9条も似たような条文を持っている。派遣労働の場合、ちょっとあいまいだが第30条の3第1項などがある。

 重要なのは同じ作業をしていても、賃金格差がある場合、それが「不合理」と言えるかが焦点となっている。何が合理性があるかについてはこんな論点がある。

 ① 勤続年数によって賃金が異なる。
 ② 雇用継続への期待があれば賃金が異なる。
 ③ 資格があれば賃金が異なる。
 ④ 同じ仕事をしていても与えられた責任が異なれば賃金が異なる。
 ⑤ キャリアコースの違いは転勤など処遇が異なるので賃金は異なる。

 勤続年数の違いによって賃金が異なるのは日本では当たり前だが、問題はその期間だ。労働によっては数年で他の労働者と同じだけのことができたりする。あるいは、若い方がかえって能率がよい場合もある。何年も働いているにパートと言うことだけで賃金が安いのは不合理かもしれない。しかし一方で、パートは雇用継続への期待が低いので賃金は安いということなるかもしれない。

 外形的に同じ作業であれば、賃金格差は許されないというのが同一労働同一賃金における法的考え方だ。違いがあるなら、使用者側が立証せよということになる。

 雇用は労働契約という契約だ。そのため、裁判上は契約時どうであったかが重要な考慮要素になる。なぜ、あなたは賃金が高いのか、なぜあなたは賃金が低いのかといった説明が一定合理的にされる必要がある。それによって「格差」に合理性が認められることになる。いくら合理的でも契約時に正確な説明がないと不合理とされてしまうかもしれない。少なくとも社内ではパートは安いのが当たり前などと片付けておかない方がよい。

  同一労働同一賃金にかかわる判例厚生労働省の検討委員会まとめの資料がある。

 最近では次の事件がある。
 長澤運送事件(東京地裁H28.5.13)
       → 定年後再雇用の賃金格差が違法とされた事例
 ハマキョウレックス事件(大阪高裁H28.7.26)
      → 契約社員との賃金格差を違法とした事例

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