働き方改革関連法の一つに労働者派遣法の改正がある。派遣先の労働者と派遣労働者とが、等しい待遇を受けることを目指して改正された。派遣マージンで利益を上げる遣事業者にとっては、今回の改正は死活問題ということになる。
労働者派遣の2つの方式
等しい待遇になる方式として、厚労省は①均等、均衡方式と②労使協定方式とを用意した。①は派遣先の労働実態に関する資料を得たうえでそれに近づけようというものだ。②は労使協定を締結して、その職の平均的な賃金などを参考に取り決めようというものだ。
労使協定方式
厚労省は派遣事業者が労使協定方式によって社員の待遇を決める場合、協定書には労働者派遣法が定める5つの項目及び省令で定める内容を定めなければならないとしている。
① 派遣労働者の範囲
協定が適用される労働者の範囲を定める必要があるが、法的に特定される必要がある。文章で特定されているかどうかは弁護士と相談するべきだろう。
② 賃金決定方式
「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金」同等またはそれ以上であること。また、能力などに見合った「改善」がされるものであること。
平均的賃金は厚労省の賃金構造基本統計調査及び職業安定業務統計などから割り出して「賞与指数」「能力・経験指数調整」といった数値を当てはめる。これはかなりめんどうだ。何が平均的かよくわからないことだろう。
③ 公正な評価による当てはめ
平均的賃金を基準に、個々の派遣労働者に当てはめるがそれが公正でなければならない。この公正というのは意外と大雑把なものになるのではないだろうか。
④ 賃金以外の待遇の内容
賃金以外の待遇の決定方法を定める。この場合、「通常の労働者」の待遇との間において均衡を失しないようにすることが求められている。
⑤ 教育訓練
⑥ その他
均等・均衡方式か、労使協定方式かは派遣事業者が考えているビジネスモデルによっても異なる。派遣事業者は「同一労働同一賃金」の登場によって、自らのビジネスモデルを根本的に見直す必要がありそうだ。
例えば、リーダーとなる正社員がいて、あと残りがすべて派遣という場合には前者ほうがやりやすいように思われる。一方で、すべて派遣でもなく、大企業で待遇がよさそうだというときには労使協定ということになろうか。
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