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№2340 派遣労働要注意「同一労働同一賃金」

 働き方改革関連法では政府は「同一労働同一賃金」を打ち出した。派遣労働はその影響を最も受けるのではないだろうか。

1. 同一労働同一賃金
  今回の同一労働同一賃金正規雇用と非正規雇用との格差是正を目指すものだ。同一企業において,同一の労働内容であれば,給料,手当,休暇,休職など労働条件は同一でなければならない。しかし,職務内容,異動の範囲など合理的理由があれば差をもうけることができる。

 

2. 改正労働者派遣法の場合
  職場における同様の待遇は派遣労働にも求められる。派遣の場合,雇用と職場(使用)が分離しているため,派遣先で「同一」であることが求められる。つまり,正社員と派遣労働者が同じ仕事をしていて異動もないということであれば,原則として同じ待遇が求められる。

 

3. 派遣事業者にとっては死活問題
 もともと,派遣業は派遣労働者と正社員との賃金の差額を事業者と派遣労働者と分け合うことで初めて成り立つ事業だ。正社員と同じ待遇にしなければならにとなると,分け合うだけの差額が消えてしまう。となると,派遣料が正社員の給料よりも高くなってしまう。それを派遣先が,雇用調整のための経費と割り切ってくれればよいが実際にはそうもいかないだろう。

 

4. 改正労働者派遣法は次の対応を求めている
  ①「派遣先に雇用される通常の労働者」と均等とする(26条)
  ② 派遣労働者との間で労使協定を結ぶ(47条)

 ①については,派遣先から「通常の労働者」に関する雇用情報を得なければならない。派遣元からすればけっこうハードルが高い。この情報は派遣労働者に説明しなければならない。(31条)

 

 ②については,実際には派遣事業者これに頼らざる得ないだろうとというのが我々の間での一般的見方だ。そうなると労使協定の内容が非常に重要になる。これもけっこうハードルが高い。

 厚労省 → 派遣労働者の同一労働同一賃金について

 

5. 派遣先だって均等待遇が求められる
  たとえば,業務上必要な訓練を正社員に実施してれば,派遣労働者にも同じように実施しなければならない。給食施設,休憩室,更衣室など福利厚生施設も同じように提供しなければならない。これは従来配慮義務だったのが、実施義務に昇格した。

 

6. 派遣事業は2021年4月1日から
  派遣元,派遣先,双方十分注意が必要だ。特に,今回の改正では労働者に対する「説明」が重視されている。顧問弁護士などとも協力しながら労使協定,雇用条件通知書などいろいろ整備することになるだろう。

 

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