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№72 戦略的法学

 法律はこんな時に役に立つ。
 ① 大きな困難に直面したときの解決の手段。
   自社製品に欠陥があった,社員に事故が起こった,請負代金が回収できないなど。
 ② 紛争を予防する手段
   大きなプロジェクトで契約書を完備させたい。多数の顧客との関係を整理しておきたい。
 ③ 利益を生み出す,利益を固定する手段
   特許など知的財産はその典型であるが,そうでないノウハウなども契約によって財産として固定できる場合がある。あるいは,幾重にもある法的手段の中で最良の利益を生み出す手段を選択する。

   私が戦略的法学と呼んでいるのは③のことだ。経営の大きな戦略があり,その次元のために法的手段を選択していくのだ。

 ストラテジー(STRATEGY),戦略というのはもともとは戦争から来た言葉だ。そういえば,ロジスティック(LOGISTIC)というのも食料や武器といった戦時の物資供給戦略から来た言葉だ。事業の極意に孫子の兵法が活用されたりしており,戦争の極意は商売にもいろいろ役立つ。

   ともかく,ある程度の実践的知識,論理的思考ができる者どうしの戦いであれば,理念と理念との対決が勝負を決するということになる気がする。優れた事業設計の理念を持った事業が優位に戦いを進めることだろう。法律というのはその戦いの最前線に立つ部分だ。
   法律は厳格で,融通性に欠けるときがある。その分だけ確実性が確保される。例えば,契約がいい例だ。契約は双方の考えを固定させる。契約など無く,あいまいな状態がいいという例もあるだろう。しかし,大量の取引をする場合,多額の取引をする場合,それでは通用しない。契約がはっきりしなければ現場は混乱し,現場はおそろしく決断ができない。

   このように法律は,事業のもっとも根幹に関わる部分で機能する。戦略的法学はこうした企業全体の戦略を考慮して積極的に事業の組み立てに寄与するという法律の使い方を言う。