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№25 すごいぞ?トヨタ方式

 我が家のトイレには「なぜトヨタは人を育てるのがうまいのか」という本が置いてあった。最近読み終え別の本に換わっている。ちょっと前までは「トヨタ式経営18の法則」があり,さらにその前は「サプライチェーン18の法則」が置いてあった。どれもトヨタの経営方式を解説したものだ。
 最近読み終えた人材養成の本は「第1章 平伏させずに心服させる」とあり,要するに人を説得するには実際にやってみること,それも自分が率先してやってみることが大切だということが書いてある。「第2章 人と環境を同時に育てる」では日常的に疑問を持ち,少しの改善を地道に積み重ねていくことが大切であると書いてある。ずっときて「第6章 自分の部下を会社の財産に育てる」とあって上司を超える実力を付けさせるのが上司の役目であり,それは部下からいかに主体性を引き出すかが重要であるとしている。これだけ見ると,中小企業家同友会での講演とほとんど変わらない。
 一通り読み終えて感心するはよくもまあこれだけ細かく人材養成の教訓を作り上げたものだと思う。トイレで読み終えるぐらいの本でもたくさんのことが書いてあり,これが本格的な書物になればもっとすごいのだろう。実践となるともっとすごいのかもしれない。ここで浮かび上がってくるトヨタが求める人材像はわかりやすい。日常的に埋没せず,大小様々な注意を払い,改善し,大きく改善することを恐れず行えというところだろうか。この本を読めばトヨタの社員は大変だなと思う。しかし,社長たる者,社員の大変はあっても,最大限の能力を引き出す厳しさは避けられない。この辺りは社員と社長とは立場が全く異なる。
 問題はなぜ人を育てるのかという観点が欠落していることだ。この本を読めば人材養成の技術の点では大変勉強になる。しかし,このたくさんの教訓に満ちた本の中では何のために生きるのか,なぜ企業は存続しなければならないのか,社員は何を得ようとしているのかという点についての回答はない。世界一の営業実績を上げることが目的だろうか,それが何だという気持ちにもなる。人は理想を持たなければ幸福を感じることはない。トヨタの社員は社会に貢献するという誇りをどこで得ているのだろうか。この本には回答はない。理想のないまま苛酷な作業を繰り返しても人材が養成されるとは思えない。
以上