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№2299 大企業は信用できるか

2299 大企業は信用できるか

大企業が御社に出資したいと申し出ることがあります
 大企業が企業に中小企業の強みに注目して資本投下することがある。大企業の場合コンプライアンス意識が徹底しているため,契約自体は関係する法律にほぼ沿っている。取締役会や株主総会,財務諸表の整備など会社法上の基本的ルールは守るよう要求してくる。中小企業の場合,ふだんこうしたことを考えていないので,よい機会になる。

大企業の出資目的は明確にされています
 大企業が資本参加する場合は社内関係組織の決済を得ているため,参加目的はかなり明確になる。経営者は大企業の出資目的をよく理解する必要がある。私の経験では大企業が中小企業に資本参加するケースは次のパターンがあるように思われる

  ① 企業の技術力に注目して事業を共同する場合
    昨今のようにオープンイノベーションが叫ばれていると,外部の技術を広く集める目的であることがある。この場合,技術が陳腐化すれば見捨てられ,必須となれば企業統合が進んでいく。

  ② 企業の人材育成能力に注目する場合
    大企業は職人を養成することが苦手だ。建築や土木などではどうしても高度な技術をもった手作業が必要となる。少子高齢化が進み,技術系の人間は特に高齢化が進んでいる。企業にとって協力企業の職人養成は逼迫した課題だ。若手職人の養成ノウハウを持っている企業を協力企業として囲い込む必要がある。

  ③ 海外に進出している点を注目する場合
    大企業とは言え,実は海外展開にあたっては人材確保がけっこう難しい。転勤が多いため,海外での経営や技術の知識,情報の蓄積が進まない。冒険的に市場を開拓するというだけの野心的な社員を確保することも難しい。

  ④ 天下り
大企業幹部の天下り先として協力企業を育成することがある。大企業によっては資本参加割合によって幹部社員の割り当てを決める。資本参加率が一定規模以上になると大企業は見捨てない。しかし,社長が天下りでは企業内部に大志を持つ子飼いの社員を育成することが難しくなる。

提携契約書では諸法の整備が求められます
 大企業が資本参加する場合,資本提携の契約書を作成するのだが,大企業の場合コンプライアンス意識が発達しており,会社法などの諸法の整備,財務諸表の整備などが求められる。これは別に問題ないし,ガバナンスがいいかげんな企業にとってはよいことだ。

大企業のしたたかさをよく理解して決断する必要があります
 一方で,大企業の場合利益確保に貪欲だったりする。彼らなりのビジネスモデルが契約書に反映する。ここはなかなか譲らないので,それに従うかどうかは社長の決断だ。また,大企業の場合撤退戦略も契約書に反映する。見捨てようと思えば簡単に捨てられる構造になっている。それを上回る利益があるとみるか社長の決断ということになる。

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