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№1336 幹部はどのように養成されるか

№1336 幹部はどのように養成されるか
1. はじめに

 経営者が往々に陥りやすい罠は幹部に自分と同じレベルを求める点だ。これと見込んだ社員に自分と同じレベルの成果を期待してプレッシャーをかけてしまう。成長途上の幹部候補にとって日常の重圧には耐えられない。そして、辞めてしまう。経営者からすれば目をかけてやっていたのにと思うところが、すでに経営者の自己中というところか。

 キャリアの形成にキャリアコーンという考え方がある。この考えはすでに紹介した。

2. 中心性という座標軸
 キャリアコーンでは「中心性」という座標軸を提供する。人はその企業で働き続け、経験を積み徐々に企業の中心的な責任を負っていくプロセスがある。入社当初の外延部分から徐々に中心に向かっていくことになるが、その外延に対する中心部分ということになる。中心部分の頂点は普通は社長ということになるだろう。中心性の座標軸に従って、平社員時代は外延部に、課長、部長、社長とだんだんと中心に近づいていく。

 平社員は当初は営業だったり、工場ラインだったり、窓口だったりいろいろなポジションから始める。そして、そのポジションの業務や会社という社会のしくみを勉強し始める。課長になり部下ができれば、部署をまとめるためのリーダー学といったものを勉強することになるだろう。会社と顧客、会社と社会、会社内での他の部署の役割に対する理解も深まっていくことになる。

 このときに会社のあり方、理念、戦略、戦術といった経営計画に対する理解も異なってくる。この時のあり方の核心部分が中心軸ということになる。平社員、課長、部長の時に中心軸に対する自分の位置、そして自分のとるべき責任、自分のとるべき行動というのを理解していく。会社もこうしたポジションに相応しい対応が求められることになる。

3. 中心性と組織内ポジションとの関係
 企業で幹部を養成する場合、平社員から会社幹部に至るまでの組織デザインを作りあげることが必要になる。会社の戦略に相応しい組織像を作りあげ、その組織に対してどの部署にどのような人材が必要かをデザインすることになる。もちろん、戦略そのものは今ある資源(人材)以上のことはできないため、戦略が組織デザイン自体は「手持ちの駒」人材という限界の中で作られていくことになる。

 一方で、このように決められた各ポジションの責任や人の姿勢に対してどのようなものを求めるかは中心軸との関係を整理することによって決めていくことになるだろう。

  中心軸と個人のキャリアの関係はいろいろな要素を含んでいる。製造に関する知識、マーケッティングに対する知識、組織管理に対する知識、消費者の動向に対する、社会情勢に対する知識、時には会社外の人脈というというものも含まれる。こうした知識は会社として全て網羅できるものではない。また、網羅すべきものでもないだろう。会社にとって必要な知識を整理すれば、あとは社風によって常に個人の裁量的判断によって獲得されていく知識であったり判断であったりする。

 この中軸とキャリアの関係で大切なことは、「参加」と「建設」、「上昇」といった社風に関わる部分ではないかと思う。個人と中心軸のやりとりの過程で、人は自分の人生を組み立てていく。会社への帰属が個人の人生へのプラスであれば人は威力を発揮する。

4. まとめと整理
 以上整理するとこうなる。
① 人は入社して幹部に至る時間的歴史を持つことになる。
② 会社は戦略にあわせて組織デザインを行う。その際に人のキャリアを獲得していく時間的変遷、時間的過程を考慮する。
③ 組織デザイン中、各ポジションにいる「人」と中心軸との関係を整理する。
④ この関係を整理する際に、社風や個人の上昇志向を引き出す方策を忘れないこと。