名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

名古屋,豊橋,東海三県中小企業法務を行っています。

№26 法律事務所経営と武家の商法

 法律事務所は「武家の商法」であることが多い。弁護士は人の話を聞くことが商売であるが,中小企業の社長に比較すれば聞いているうちに入らないかもしれない。中小企業にあっては人の話を聞き,さらに積極的に自社の技術,製品を提案するところまで話を持っていかなければ商談は成り立たない。

 弁護士の場合,もともとお客さんが聞いてほしいと思ってやってくるし,「聞いて頂く」という考えを持っているから話を聞くといっても中小企業の社長とは違う。本当は弁護士でも,お客の声を聞き,さらに解決のメニューを示し,お客に対し「期待以上のサービス」を提供しようと言う積極性が必要なのかもしれない。それは依頼者のために親身になるということであり,依頼者が高い専門的知識を「自分のものとなった」と実感できる感覚にまで至ることである。

 弁護士業は商売ではないとよく言われる。弁護士は営利のために動くというのでは弁護士は信用されないし危険である。しかしだからといって経営のことは無視できない。私の事務所の経営指針の中に,経営戦略として現代経営学を取り入れることを掲げている。それは,現代経営学を取り入れることで組織として依頼者の要望に応えることができ,サービスの質も格段に向上すると信じているからだ。また,どのような質の高いサービスも知ってもらわなければ無いとの同じだ。そのためのマーケッティングも必要だろう。

 経営学は多くの企業の実践の中で体系化されてきた学問であるが,その多くは規模の大きい企業の活動を念頭に入れている。その現場も「生産」であり,「販売」であり,「流通」であったりする。法律事務所は事業内容が特殊であり,規模が小さいためすぐには当てはまらない。経営学が解明した生産ラインのあり方に関する理論が法律事務所にすぐに当てはまらないことは明らかだ。しかし,実は多くの応用問題が隠されている。ここのセンスが経営者たる弁護士には求められている。考えてみればこれは法律事務所に限ったことはない。世の中に同じ企業はない。中小企業の社長は様々な経営学的問題を自分の企業に応用できないかいつも頭を使っている。ここのところの柔軟性が法律事務所に求められており,それができなければ「武家の商法」なのだ。