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№16 戦え!中小企業

 中小企業白書によると大企業を頂点とした系列的取引関係は徐々に変化し,中小企業の取引先も多様化しているという。系列的取引関係では中小企業が強い上下関係に置かれるため,受注量,単価,納期,品質は親会社の指示どおりとなり競争原理が働きにくい。競争原理があるとすれば,いいなりにならないと他の企業にシェアを奪われるという一方的な競争ということになろうか。
 系列が解体し,取引先が多様化すれば同じ競争でも意味合いは全く異なる。単価一つとっても,他者と比較した交渉が可能となり,ある程度の力関係を回復できる。しかし,系列が解体したのは大企業の生産拠点が中国などの国外に進出したためでもある。大企業にとって必要の無くなった企業を外す傾向があっため,大企業に対する忠誠心に頼っていたのでは生き残れなくなったというのも新しい競争社会の特徴なのだろう。
 中小企業はきびしい競争社会の中でどのように戦っているのだろうか。自社の技術力,技能にふさわしい販売価格をいかに獲得するべきだろうか。個々の企業では自社の品質を高めて差別化する,営業努力により取引先を多様化させる,企業間情報交流などによる創造性の確保などいろいろあるだろう。法律的な側面で言えば,取引関係の契約化(書面化)が大切だ。本来,契約は対等な取引であることを前提に明確な取引関係を築き上げていく努力が必要である。
 しかし,力関係が実際に存在する中で取引の契約化を推進するのは至難の業だ。あいまいな取引慣行は中小企業に対して理不尽な事態を引き起こすことは少なくないが(例えば,納期を極端に短くされる,支払いになってから値下げを求められるなど),社会のしくみが不十分であるため泣き寝入りも少なくない。個々の企業の努力には限界がある。実際には経営をとりまく外部環境に対する不断の改善運動が不可欠なのだ。独占禁止法不正競争防止法,下請代金法,国が出している様々なガイドラインなどある程度の武器はそろっている。どのような武器も使われなければ意味がない。つまらない武器でも利用方法によって大きな力になることがある。中小企業者,団結し,武器を取って戦え!