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№433 中小企業政策と監視機関との関係

№433 中小企業政策と監視機関との関係
 中小企業基本法は平成11年に改正され、「中小企業の柔軟性や創造性、機動性に着目し、中小企業こそが我が国経済の発展と活力の源泉であり、中小企業の自助努力を正面から支援します。」(中小企業庁WEB)というものになった。

 この考え方は、中小企業家同友会が進める中小企業憲章と同じ趣旨を含んでいる。私も中小企業憲章の考え方には賛成している。中小企業中心の経済社会こそが豊かで多様な経済社会を作ると考えているからだ。

 中小企業は経済的には弱い。大企業との力関係からすれば、取引価格を自主的に決めることが難しい。大企業のアホな担当者が、権力を振り回しても中小企業の社長としては中々対抗できないのが実情だ。この不公正というのは、中小企業が持っている商品価格が実現されていない関係と言っても良いように思う。

 大企業を適切にコントロールして自由な競争社会を作り上げようというシステムが我が国では公正取引委員会であったり、地方財務局であったりする。私はこれらの機関の権限強化が重要だと思っている。また、少なくとも大企業や銀行がいかに地域に貢献しているか、いかに中小企業活動の活性化に貢献しているかに関する情報が公開されることも不可欠だと思っている。

 しかし、一方で規制の強化は自由主義経済の視点から見れば妥当で無いとも思う。何でも監視すればよいと言うものではない。大企業だって、銀行だって、本来、自主的な経済活動が許されて初めて発展するし、創造性も生まれる。役所と癒着が経営をゆがめ、企業が食い物にされて、やがてつぶれていくというのはJALの教訓だ。

 私としては、中小企業のために活動することを目的とする、自主的なNGOが発展し、監視機関と連携が図られるシステムがいいのではないかと思っている。また、大企業や銀行に対する規制は、直接的な規制ではなく、市民的な監視によってコントロールされるシステムや、経済的な誘導政策によってコントロールされシステムがよいと思っている。

 この点から言うと、米国、地域再投資法(Community Rinvest Act / CRA)のシステムは参考になる。この法律の下、連邦監視機関が金融機関に対して地域のクレジットニーズにそった融資をしているかどうか監視することになる。その情報が公開され、銀行の社会的貢献は消費者、世論によってコントロールされることになる。また、金融機関と地域コミュニティのためのNGOとの交流のあり方も説明されている。

 ただ、日本的かどうか知らないが、時々、ニセモノNGOが出現して、利権をむさぼることがあるからたちが悪い。これは、最終的に市民、中小企業や行政、大企業の自浄能力に依存することになるだろう。