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№15 企業の独立性と契約社会

 どのような商売も契約なしには考えられない。契約社会の建前は互いに独立した当事者が自らの意思で契約に入ることを前提立っている。どのような大企業が相手であれ,それが自治体や国であれ,契約社会では対等,独立であることが建前である。それが自由主義社会というものだ。
 しかし,中小企業の場合,契約関係はあいまいであることが多い。請負代金の価格決定,代金支払時期,品質の保証など多くが取引慣習で決められており,実際トラブルが起きた場合には力の弱い者が泣きを見るという結果になっている。中小企業の独立性,自律性を確保するためには中小企業社会の契約社会化は不可欠だ。
 2007年中小企業白書はこの点注目して「取引条件の明確化・書面化」の必要性について分析する。下請代金支払遅延等防止法は下請事業者の公正化と下請事業者の利益利益の保護を目的としているが,その中で重視されていることは取引条件の書面化である。白書の分析では取引条件を書面化することにより取引条件が途中変更されることが少なく「変更のリスク」の減少が大きい。特に「受注数量」「受注単価」とも変更されるリスクが大きく低下する。書面化した企業の業績も伸びている。
 近年,「系列化」についての変化が見られ,中小企業は取引先の多様化傾向が進んでいる。取引との関係は慣行で処理しきれなくなっている。契約関係を明確にし,多様化に伴う不確定要素を排除していくことが必要である。
 もとより,書面化を要求できる強い中小企業が書面化しているのであって,書面化したから業績が伸びたのではないかもしれない。しかし,契約の明確性を目指す企業は,自律的志向の強い企業であることは間違いない。それは相手にも厳格さを要求する一方で,自らにも厳格さを要求する点でよい企業と言えよう。よい企業は業績は伸びるのである。