名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

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№14 誰が商品価格を決めることができるか。

 中小企業の自律性は商品価格が誰が決めているかによって判断できる。こうした視点から2007年版中小企業白書はちょっとは読んでもいいかもしれない。
 前にも紹介したが,2007年版を買ったら,すぐに2008年版も買うことになってしまった。とりあえず,2007版から。
 2007年版中小企業白書は中小企業と大企業との関係についても詳しく紹介されている。白書では1990年以降の「系列取引」についての最近の変容について触れられている。このことは2008年版にはない。
 2007年白書,第1章では大企業と中小企業の分業構造について触れられているが,「出荷額シェア」は36.2%が中小企業にるものである。中小企業が生産する素材・部品のうち60%~100%が大企業に投入されている。電気機械器具製造業では実に98.7%が大企業に,輸送用機械器具製造業でも94.2%が大企業に,食料品製造業は98.8%となっており,今更ながら大企業との契約の比重の大きさが目立つ。しかし,これだけでは系列取引は変わっていないとは言えない。白書ではさらに,中小企業が多数の取引を持っているかどうか取引構造に注目して分析を進めている。その結果はメッシュ化(取引相手の多様化)の進展が認められるという。
 白書がおもしろいのはメッシュ化の進展と中小企業の自律性に関する分析を進めている点である。自律性の基準として「販売価格は誰が決定するのか」を掲げており,決定権に主導的役割を持つ中小企業が増えていると分析している。さらに白書では「技術力・技能の販売価格への反映されない要因」「中小企業が価格交渉力・価格決定権を持つための条件」について分析し,①販売先の多様化,②技術交流,情報交流の積極性が中小企業の自律性確保の要因になっていると分析する。情報が交流されることにより,技術力が上がり,商品の差別化も進む,さらに取引先が多様化することで,価格交渉を強気にでることができるなどをかかげる。
 外にも中小企業白書では中小企業における価格決定要因についていくつか分析され興味深い。