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№32 中小企業家同友会のDNA

 中小企業家同友会は1957年4月に設立された日本中小企業家同友会が出発点である。当時中小企業政治連盟,全国中小企業協同組合なども設立されており,同友会はこれらの団体に対抗するかのように設立されたのである。
 ところで,1957年の中小企業白書では経済の二重構造が取り上げられ,遅れた中小企業をどのようにするかが課題とされていた。その対策として大企業の下に中小企業の系列下を進めるとともに,中小企業そのものを政府の管理下に組織化していくという政策がとられていった。
 中小企業家同友会はこうした系列下,組織化に反対して,自主独立の中小企業家の育成こそが日本のとるべき方向であると主張したのである。1959年,日本中小企業同友会・関西中小企業同友会声明では「中小企業家は独占偏重政策を是正し,民主主義的環境を作り上げ,われわれ日本国民の繁栄に寄与せんとするものである。」と述べている。
 この自主独立の精神は今日の中小企業家同友会の基本的考えになっている。しかし,歴史は流れ,高度経済成長を遂げた後にオイルショックがあり,さらにバブル経済の崩壊,グローバリゼーションと今日の情勢は大きく異なる。中小企業も力を付けてきた。大企業と下請けとの関係は大きな変化を受けている。最近では大企業は下請けと呼ばず,協力企業という言葉に変えている。諸外国も日本の大企業と中小企業との関係を学ぼうとしている。それでもなお,中小企業が大企業に対して対等独立な取引関係を築き上げることは難しい。ちょっとでも中小企業が油断すれば,たちどころに苛酷な待遇が待っている。「中小企業家は独占偏重政策を是正し,民主主義的環境を作り上げ,われわれ日本国民の繁栄に寄与せんとするものである。」の精神は健全であり,今日的生命を持っているのである。