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№13 意外とよかった中小企業白書

 中小企業政策の本を読み始め,最近はそこに関心が集中している。中小企業白書というのも初めて購入してみた。2007年版を購入したと思ったら,すぐに2008年版が出てしまい,これも買うことになってしまった。
 2007版,2008年版と比較してそれほど大きな経済事情の変化はないように思われる。2008年版はテーマを違えて編集している。原油高や建築基準法問題など2008年版ならではのテーマもあり,それはそれでおもしろいかもしれない。
 とりあえず,2007年版から。
 白書には全国各地のユニークな中小企業の例が"Case"として紹介されており,これだけ読んでもおもしろい。2007年版事例3-3-1は沖縄県の株式会社沖縄教育出版が紹介されている。白書は「事業戦略に応じた適切な人材構成」と評価している。おもしろいのは「日本一長い朝礼」だ。長いというのは朝礼が1時間というのもあるが,社員が列になって肩をもみ合うという列の長さもあるのだろう。これは確か,同友会で紹介された会員の会社ではなかったろうか。
 1999年中小企業基本法が改正され,中小企業を「地域経済活性化の担い手」などとして,中小企業の独立性や積極性を評価した内容となった。当然のことながら中小企業白書も新中小企業基本法に沿った内容になっている。量は膨大なので全部を読むことはできないが,目次に目を通しながら拾い読みするのもおもしろい。
 中小企業基本法第13条は「国は、中小企業の創業を促進するため、・・・創業に必要な・・・施策を講ずるとともに、創業の意義及び必要性に対する国民の関心及び理解の増進に努めるものとする。」とあり,そして,白書第2章は「開業・廃業と小規模事業を取り巻く環境」と表題され,操業・廃業に関する統計的資料の分析が行われている。その中でおもしろいのは基本法13条に言う「操業の意義及び必要性」である。白書は操業・廃業を「新陳代謝」とし,正常な新陳代謝が機能する場合とは「生産性の低い事業所が廃業し,生産性の高い事業所が開業する」ということであるから,正常な新陳代謝は競争力は増加を意味するとしている。一方事業承継の困難さから,競争力があるにもかかわらず廃業する例が増えていることを示し,不正常な代謝と呼んでいる。
 白書では創業,開業など我が国の企業活動の活発さを示すEEA(Early-Satge EntrepreneurialActivity)を比較するとOECD加盟国23カ国の統計中下から2番目という低さだということである。