名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

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№112 中小企業法務の特徴

中小企業法務 №112 中小企業法務の特徴

  「中小企業法務の理論と実務」という本がある。大阪市立大学法科大学院での教科書として作成された本だが,学生ばかりでなく,私達の勉強にも役立つ。

  この本によると,中小企業には「光」と「影」があるという。「光」は地域経済の担い手であったり,技術革新の担い手であったりする部分である。「影」の部分は経営資源が脆弱であったり,大企業との関係での競争上の不利というところにあるという。

 中小企業政策を考える上で,大企業との関係との関係をどのように考えるかは,その人の中小企業に対する考えを端的に反映する。本書は中小企業の「光」として,「大企業の補完的に役割」を掲げる。「大企業の高度なニーズに応えることにより,日本産業の競争力強化に役立つ積極的役割」があるというのだ。

 我々は中小企業の自律性,独自性を常に強調する。この立場からすると「補完的」と位置づけて良いかどうか疑問が残る。本書は一方で「光」として「大企業と中小企業の棲み分けに起因する中小企業の役割」を掲げ,独自技術で取引単位の小さいニーズに対応できる点で中小企業の独自性を掲げている。

 「補完的」場合であっても,法律上は大企業と下請企業とは対等な立場に立つ。経済実態としての補完的機能と,法的な形式とは別ということかもしれない。問題は「補完的」という部分を「光」としてしまうところにあるのだろう。「補完的」役割から中小企業が不等な競争上の地位に置かれることはまれではない。法律家からすれば,実態と法経式のギャップをどのように埋めるかが課題である。それは「影」の部分をひきづっているのである。