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№786 中小企業政策の方向、中小企業家同友会全国大会

№786 中小企業政策の方向、中小企業家同友会全国大会
 北海道の中小企業家同友会全国大会に出席している。議案書によるとこの団体の総数は全国で4万1630人となっている。愛知県は3093名で全国第2の規模だ。

 今回の総会は2つの特徴がある。
 ① 平成22年6月18日に「中小企業憲章」が閣議決定されたこと。
 ② 平成23年3月11日、東日本大震災に伴って社会経済情勢の大きな変化があったこと。

 なお、会議では地域連携、産学官連携、組織問題なども議論された。

 これらのテーマは平成22年から平成23年にかけて生じた大きなエピソードだが基本的にはここ数年来の社会経済情勢の変化が加速したと考えるべきだろう。総会ではいくつかの点から議論された。

1. 中小企業像とその政策
  総会2日目、冒頭中小企業白書についての報告があったが、「系列」に関する分析が興味深かった。系列に属しても属さなくても大企業の取り扱いに大きな違いがないことが報告された。これは私の顧客の傾向から見ても実感と一致する。少なくない企業は複数の企業を顧客としているし、多様な顧客を向けて営業攻勢を進めている。これは、中小企業の自律性が強まっている考えてもいいのではないだろうか。

  北海道のある合板製作企業は、いくつかの会社と共同して新製品を独自に売り出しているが、そのことで協力企業の仕事が増えたという。その結果、協力会社は特定の大手商社の仕事を断ることができたという。断ることで、大手商社に対する単価値上げに成功したらしい。

 「系列」から脱することは自律の第一歩だろう。中小企業憲章の役割はこうした企業自体の強い自律意識を促すことや、自律性を促すための政策が求められる。

2. 社会情勢の大きな変化
  社会情勢の大きな変化については国内と世界とに分けて議論された。
  今回の震災に対する位置づけは、日本企業の国際対応の動きをさらに促進させるもの、きっかけになるものという考えで報告された。

  国際情勢の変化は言うまでもなくグローバリゼーションである。中国を始めとしたBRICsの進展だ。興味深いのは先進国の特徴として経済成長が頭打ちになっている点だ。先進国のあり方としてはBRICsなどの途上国の経済成長をとりこむことで市場規模を大きくせざる得ないとの分析がされた。時間がなかったこともあるだろうが、グローバリゼーションの中で中小企業の進出のあり方について踏み込んだ分析の報告が聞きたかった。

  もうひとつは日本固有の問題、経済のガラパゴス化が指摘された。余りに高度化して、必要のない品質まで製品化したために高コスト化して、途上国などとの競争に負けているという問題点だ。だた、この問題については、大衆が求める平均的な品質、「ボリュームゾーン」と言われる部分をターゲットにした新たな製品提案は中小企業ならできるという報告もあった。

  尚、中小企業庁からの報告で、中小企業は実力がありながら、海外進出できないでいること、中小企業の海岸進出によって企業全体の規模が大きくなり、結果として国内雇用も増加しているという内容は興味深かった。