名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

名古屋,豊橋,東海三県中小企業法務を行っています。

№4 中小企業は収奪される?

 現場の情報を瞬時に経営に役立てる。これが中小企業の強みとよく言われる。大企業には大企業の持ち場があり,中小企業は中小企業の持ち場がある,だからこそ中小企業が世の中に存在し,世の中のためになっている。もっともっと競争の自由が保障されれば中小企業はもっと発展することだろう。しかし,現実はそうは甘くない。製造業では2次,3次下請けに対しては苛酷な単価の値下げ,短期の納期が日々要求されている。現場の情報から創造的な商売を生み出すことがあるが大企業の参入許せばやはり競争力に劣ることになる。大企業は中小企業に対して圧倒的な優越的な地位に立つことが多く,中小企業は競争力で劣ることが多い。大企業には勝てないとあきらめることは競争原理を旨とする資本主義社会ではやむえないのだろうか。
 何事も競争社会がよいという訳ではない。しかし,事業者の場合はやはり競争に身を置いてこそ社会に貢献することになるだろう。顧客に喜ばれる製品を商いすることが社会が喜ぶことであると考えるのが商売の正道というべきではないだろうか。では,大企業との戦いに敗れた中小企業はそれは世の常とあきらめることになるだろうか。大企業と中小企業とは本来役割が異なるのだから立派に競争関係,協同関係がなりたつはずである。しかし,先に述べたように対等な当事者としての競争に立つことは難しい。大企業同志の競争があるにしてもその地位が確立している。一方中小企業はきわめて厳しい競争関係にさらされている。大企業は圧倒的な宣伝力を利用して文化をも左右する。政府に対する影響力も大企業は違う。我が国独特の系列的な下請け関係は競争上の不平等を如実に表している。残念ながら中小企業と大企業は対等な当事者としての競争関係にある訳ではなさそうである。対等な当事者としての競争関係にあれば本来得られたであろう利益は大企業が吸収することになる。「中小企業は収奪される」と言われるが,収奪の構造があるとしたらそれは不平等からくる正当な利益の喪失ということになろうか。もっとも,この「対等」「不平等」の意味は難しい。中小企業問題,中小企業法務の本質はこの対等の意味の探求にある。