名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

名古屋,豊橋,東海三県中小企業法務を行っています。

№55 企業法務の中の中小企業法務

 中小企業法務研究ノート週5稿をきまりとして書いているが56回になって,なんだかしんどくなってきた。誰と約束した分けでもないが,1年間このペースを守ってがんばっていきたいと思う。
1. 組織問題,対外活動問題,私的自治の問題,公的規制の問題
 一般に企業法務は会社の組織,会社の対外的取引に分かれる。この分野は取引社会の問題だから幅広く活動の自由が認められているが,これは私的自治の範囲ということになる。何でもかんでも自治に任せていたのでは様々な弊害が起こる。会社幹部が私利に走って会社に損害を与えた場合,大企業が優越的地位を利用して無理難題を言ってきた場合など,あるいはエビで一儲けすると偽って出資金を集めたりするような場合などきりがない。会社の活動は社会に対する影響力が大きく,私的自治に任せていたのでは社会が成り立たない場合もある。そのため公的規制も様々な形で存在する。そこで,企業法務も私的自治における法務,公的規制における法務と分けることができる。
2. 自由競争
  資本主義社会では自由経済,競争社会であることが原則だ。リスクもあるがチャンスもある。それにより社会は発展すると考えているのである。企業法務は自由経済の法務であるから自由経済をいかに保障するかが重要な価値観となっている。もちろん,自由な社会というのは何でもできるという訳ではなく,ルールがあって始めて自由になると言う側面もある。信号機がなければ渋滞が起こり,結局は自由な移動が保障されないのと同じだ。このときのルールが企業法務ということになる。会社法が定めている各種公開制度,取引の安全を図る制度,不正競争防止法独占禁止法など実に多い。
3. 中小企業法務の理念
  企業法務の多くは大企業を念頭において構成されている。大企業は組織も大きく,一つの企業としては経済単位も大きいため社会的影響力が大きいからだ。しかし,日本経済を支えているのは中小企業法務も大きな比重を占めている。個人の生活を豊かにしているのは最後には中小企業の活動である。中小企業法務を考える上で重要なのは次の点だ。
 ① 中小企業は自由な活動が保障されてこそ発展する。中小企業法務は企業の自由な競争,発展にとて役立つものでなければならない。法律が営業的利益や企業の社会貢献に役立つという,企業法務の積極的側面である。
 ② 中小企業は全体としては大きな影響力を持っているが,個々の単位は小さいため大企業や政府との関係で犠牲になって自由な競争関係に立たされない関係に立つ。中小企業法務はこうした自由な競争関係,大企業とも対等な契約関係に立つことができるために役立つものでなければならない。
 ③ 所有と経営とが未分離であるため,個人の経済状態が企業のあり方に大きな影響力を与えるし,逆もある。社長個人の企業時の観点からの保護なくして企業の発展はあり得ない。
 ④ 中小企業政策は中小企業運動を背景に展開する。普段に変化する社会,経済情勢に対して外部環境是正に向けて不断に戦わなければならない。中小企業法務はこうした運動の指針作りに役立つものでなければならない。