名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

名古屋,豊橋,東海三県中小企業法務を行っています。

№53 中小企業憲章 その2

中小企業憲章は中小企業政策にとどまらない,国民のあり方を深く問う問題である。

1. 憲法との関係について
 中小企業憲章では憲法の価値である「個人の尊厳」「民主主義」との関係が明確にされるべきである。自己実現に向けて創造的に人生を選択する姿勢や,艱難に際しても自己責任の下に人生を選択する姿勢は自由にかかわる問題である。また,様々な外部要因からくる自由に対する障害は国の責任で除去することは自由を保障する国家の責任である。こうした憲法の意義と中小企業憲章との関係はもっと明確にされるべきだと思う。とりわけ,経済民主主義,市民社会に対する貢献と憲法との関係については考察が弱いように思う。
2. 法的位置づけについて
 憲章の法的位置づけは明確さを欠く。「基本法」である以上,中小企業政策のすべてにかかわる問題の「基本」を示す法律ということになる。これは,中小企業プロパーな領域に限らず経済,社会政策上中小企業にかかわる問題については基本法は配慮されることになると思う。
 中小企業憲章はあらゆる法律,政策の解釈基準を示す基本的思想を表現すると共に具体的政策も指示するとなると,政策の総合的指針を示す「国家戦略」の意味づけを持っているように思われる。我が国には別分野で国家戦略が存在しておりこれは閣議決定されている。
3. 法務について
 中小企業固有の問題は常についてまわる。この場合に対等でかつ自律的競争関係を実現するためには法律は強力な武器となる。独占禁止法,下請代金法,不正競争防止法だけでなく,会社法知財関連法,税法など法政策全般を中小企業家にとって役立っているか,役立つものにしようとしているかについて検討されるべきである。
例えば,中小企業家のための「中小企業護民官」「中小企業オンブズマン」などの制度はおもしろいかもしれない。これは中小企業家に対する相談窓口だけでなく,公取のような権限を持った機関であり,直ちに是正措置をとることができるというような制度もよいかもしれない。また,これは憲章とは直接関係しないが,中小企業家同友会内部にも法務部のようなものがあってもよいかもしれない。大企業では独自の法務部があるが,中小企業ではこうした法務部を作ることは難しい。
4. グローバリゼーションについて
 グローバリゼーションによる国内政策貧困化についてはいくつか触れられている。内需の問題や,中小企業中心政策の問題などがそうである。
 ところで,分業の国際化によって他国との競争関係に立っている。低コストで勝負する途上国の中小企業との共生のあり方とは何かが明確に示されるべきであると思う。先進国においても多国籍企業の進出により,当該国,自治体な,当該国の中小企業が独自が積極に対応して,国際市場への参入の足がかりにする動きもある。こうした,厳しい競争関係の中にあって共生関係とはなんであるかを示すべきではないだろうか。
 こうした問題に対応するためには中小企業に対する国際的政策,国際的な理念,つまり中小企業憲章の国際版,「世界中小企業家宣言」のような発想が必要ではないだろうか。