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№52 環境マネジメント+アルファ

 環境マネジメントと言えばISO14001がつとに有名だ。地球温暖化対策には特効薬はない。そのため日常活動のあらゆる場面で少しずつ改善を繰り返すことで徐々に温暖化ガス排出抑制(節約)を進めていくほかはない。ISO14001ではそのマネジメントシステムの最適な手法とPDCAサイクル( plan-do-check-act cycle)を採用している。これは、本来工業(製造業や建設業)などの事業活動における生産管理や品質管理などの手法の一つだ。第二次大戦後に、ウォルター・シューハート(Walter A. Shewhart)、エドワーズ・デミング(W. Edwards Deming)らによって提唱され,デミングサークルとも呼ばれている。計画→実行→点検→改善→計画とくるくると繰り返すことにより全体として徐々に品質が向上し,その繰り返しは限りないとするものである。
 環境問題は従来は外部からの圧力,規制によって解決を図ってきたことが多い。公害事件はその典型だ。一方,温暖化対策の特徴はISO14001によって生産の内部から図っていこうところにある。温暖化対策実行機関には事業所のトップである社長が据えられ,温暖化についての理念が示され,戦略的な指針を示し,PDCAサイクルによって実行を繰り返すというのが温暖化対策の基本的考えである。これは企業全体のマネジメントをいかに効率的に行うか,いかに企業の意思が徹底するかへの挑戦であるため,ISO14001の認証を取得している企業は「きちんとしている」という信用を得ることになる。
 このようなマネジメントのあり方は我が国の政策にも大きな影響を与えている。我が国の地球温暖化対策の基本法は「地球温暖化対策の推進に関する法律」(温対法)であるが,「京都議定書目標達成計画」戦略的計画を持ち,「地球温暖化対策推進本部」のトップマネジメントは内閣総理大臣である。これは,国全体をマネジメントするという意欲がよくあらわれている法律で,我が国の環境法としてはめずらしい法律だ。
 PDCAサイクルはいつまでも向上することはなく,限りなく一定の限界値に近づくにすぎない。そのため,余り繰り返されると飽きてしまいマンネリ化するという致命的な欠陥がある。この欠陥があらわれるのは意外と早い。そのため,PDCAサイクルに加えて何かプラスしないとやっている者の楽しみが無くなる。その対策として環境に対する社会貢献,環境CSRを加えることが多い。時々,企業では木を植えたりしているのはそうしたことも考えている。しかし,根本的にはPDCAサイクルだけに頼るのではなく,その過程に創造的なエッセンスを入れる必要があるだろう。日本の政策にも当然必要なことだ。