名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

名古屋,豊橋,東海三県中小企業法務を行っています。

№3 中小企業の公共性

 企業は社会的責任があるとよく言われます。企業の法令遵守義務,いわゆる企業コンプライアンスが強調されるようになり,最近では企業の社会貢献もしばしば語られるようになりました。
 企業の公共性はいうまでもなく経済,社会の健全な発展,持続社会の実現に重要な役割を果たしている点にあります。大企業は世界経済の牽引役を引き受けるでしょうし,雇用も創出します。中小企業はどうでしょうか。中小企業にあってもに地域,日本,世界経済の牽引役となっていることには変わりません。しかし,その牽引のやり方が大企業とは大きく異なります。
 中小企業は個性的な企業が多い。規模の小さな企業は市場と直接対話し,即座に反応するのが取り柄です。顧客から様々な情報を社長を中心とする社員全体が即座に把握し,反応する体制が整っています。大企業は特定の商品を対象に生産して大量に売りさばく経営スタイルですから,地域の細かなニーズには応えることはできません。中小企業と大企業の大きな違いがあります。
 このような違いをどのように考えるかによって,我が国の中小企業観は大きく分かれます。一つは,大企業を巨大な樹木にたとえて,中小企業は大企業に従属するその葉っぱとするような考え方です。日本の中小企業は大企業に系列化され強い従属関係を作っています。確かに日本型の産業構造は今日でも大きくは変わっていません。しかし,中小企業も徐々に系列を脱するようになる一方,成熟した高い技術力によって大企業とも対等に交渉しうる力も身につけています。たくさんのそれは森にはたくさんの木があり,それぞれが個性をもって森全体の彩りとなっている様子に似ています。中小企業と大企業を対等と考え,社会,経済構造の中でそれぞれ独自の役割をになった主体であるというのがもう一つの考え方です。
 民主主義の国はたくさんの考えを互いに認め合い,尊重し合う社会です。個人の要求が何らかの形で社会に反映して社会全体がモザイク模様のように美しい姿になっていくというのが民主主義社会の理想です。それは美しい自然が,たくさんの種類の生き物によってできあがっているのに似ています。中小企業の公共性はこうした多様な価値観を世界に反映させるところにあると言ってよいでしょう。