名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

名古屋,豊橋,東海三県中小企業法務を行っています。

№84 Think small first.

 中小企業は地域経済,文化の主役であるべきだ。

 Think small first.とはEUにおける中小企業政策の理念だ。
 何事も小企業のことをまず考えて政策決定が行われるべきだというのがこの思想だ。それはいったいどういう意味だろうか。

 取引社会では各当事者は対等である。お父さんが社長をやっている中小企業が,トヨタと契約を結ぶときは対等な当事者として扱われる。この「対等」というには様々な意味が込められている。対等であるが故に力関係がむき出しになってしまうこともある。製品単価の切り下げや,支払の遅れ,大企業は無理難題を中小企業に突きつける。対等な関係であることから自由に決められる,いやなら契約を止めればよいと言うのである。しかし,法はそんなことは考えていない。対等とはお互いに自由な意思に基づいて契約できるという意味である。優越的な地位をかさにきて無理な契約を強いるのは「対等」とは言わない。法は対等な関係を実現し,真に自由な関係を実現するために様々な制度を用意している。対等な当事者関係を実現するためにはThink small first.とまず中小企業のことを考えることが大切だ。

 しかし,Think small first. という言葉にはもっと積極的な意味がある。それは,持続社会における社会経済政策のあり方そのものを示している。国民一人一人が豊かであるとは経済的にも文化的にも国民一人一人が自律的に人生を選択できる状態である。人が自由であるとは経済,社会,文化環境の中で自己の意思で人生を決めることができる状態だ。人は家族を作り,地域社会を作り,自分が誰であるかを確認しながら成長していく。個人が確立できる環境こそが,豊かで,美しいと言える。個人が自由である社会では地域は個性的となり,お互いを大切にし,人々は地域を愛し,お国自慢をすることだろう。中小企業はこうした社会の最も重要な経済主体として尊重されなければならない。それがThink small first.の意味だ。