№2236 不良品対応と危機管理
湊ハマはヒートユニットを納入した。日本電産製が部品である給水ポンプを製造した。
湊ハマをHPで調べてみると,資本金8100万円,従業員74人となっている。
デンソーと湊ハマとには基本契約があって,納入後1年間,品質を保証している。
その上で次の条項が存在した。
「被告湊ハマは,市場クレーム(製品が市場に出荷された後に発見された納入品の不具合)により被った原告の一切の損害につき,補償の責を負う。」
判決は日本電産敗訴,湊ハマ勝訴に終わった
東京地裁は和解契約に基づき,日本電産に対して,4億3198万4452円を支払うよう命じた。一方,湊ハマについては,和解契約によって賠償責任から離脱したと判断し,同社に対する請求を棄却した(東京地裁H30.3.30,ウェストロー2018WLJPCA03308001)。
この事件は中小企業法務にとって重要な事件だ
この事件は法的には難しい議論はないのだが,不良品発生時の危機管理の企業対応としては非常に重要な教訓を示している。
① 初動で自社に有利に覚え書きを取り交わしておく
② 原因や損害の範囲もわからないうちに覚え書きを取り交わすのは誤りである
日本電産は覚え書きを締結するべきでなかった
本件ではデンソーと日本電産は内部結露を原因とするクレームについて日本電産が主に責任をとる形で和解をしている。しかし,実際には日本電産製モーターに問題がある訳でもなかった。担当者は経営判断から責任をとったとしている。しかし,どんな損害となるか判断したと思われ,この点,法務部との連係が悪かったか,法務部がことの重大性を認識していなかったということになる。
湊ハマは適切に対処している
本件では湊ハマは責任を負わない形で和解している。不良品のが判明した時点でこのように動けたおかげで5億円助かっている。
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