2021年に中国民法が施行された。中国民法ではいくつかの懲罰的賠償のルールが定められている。
日本の制度では損害賠償は本来文字通り損害を賠償するものであって,それ以上の賠償はない。日本の法制度には懲罰的賠償という考え方はない。あるとすれば,労働基準法114条の「付加金」ぐらいではないだろうか。
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知的財産侵害
民法1185条
「故意侵害他人知識産権,情節重的,被侵権人有権請求相応的懲罰性賠償。」
故意に他人の財産権を侵害した場合,事情の深刻さを考慮して被侵害者は相応した懲罰的賠償を請求できる。
中国著作権法,特許法など個別法では懲罰的賠償を最大5倍の範囲で定めており,情状によって賠償額に幅がある。最高人民法院は「知的財産権侵害の民事事件における懲罰的損害賠償の適用に関する解釈」を発表し,懲罰的賠償額の判断基準を示している。
製造物責任
民法1207条
明知産品存在缺陷仍然生産、?售,或者没有依据前条規定采取有效採取救措施,造成他人死亡或者健康厳重損害的,被侵権人有権請求相応的懲罰性賠償
商品の欠陥を明らかに知りながら,依然生産,販売もしくは前条の規定に従った有効な措置(販売中止,警告,回収など)を講じない結果,死亡もしくは重大な健康被害をもたらした場合,被害者は相当の懲罰的賠償を請求できる。
環境汚染など
民法1232条
侵権人違反法律規定故意汚染環境、破坏生態造成厳重后果的,被侵権人有権請求相応的懲罰性賠償。
加害者法律に違反し故意に環境を汚染し,生態系を破壊し,重大な結果を招いた場合,被害者は相当の懲罰的賠償を請求できる。
懲罰的賠償については,米国では長い歴史を持っており,私的制裁,あるいは社会的な抑止といった議論がされている。日本でも検討はされたが導入には至っていない。私が熱かった事例が,おそらく日本で唯一制裁的慰謝料を認めた事例だろう。