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№1291 国際取引における基本契約の項目と注意事項

№1291 国際取引における基本契約の項目と注意事項

 中小企業間でも国際取引が日増しに増えて生きている感がある。日中の取引でもきちんとした基本契約の整備は必要なことだろう。たとえば,日本の製品を中国に輸出する場合にどんな点を注意したらいいだろうか。

 一回きりの取引についてはだいたい定型化されている。表面には契約内容を特定する事項があり,裏面には契約の基本的な考え方や紛争解決の基準,手法などが記載されている。日本貿易関係手続き簡易化協会というのがあって,いろいろな書式を用意している。

 繰り返し商品を輸出するような場合には基本契約と言って,取引に関する基本的な事項を決めておく。国際取引の場合,相手国とは法律も商習慣も違うこと,輸送に伴うリスクが国内とは格段に違うこと,未払いのリスクがつきまとうことから契約事項は慎重にならざる得ない。また,通関業務,保険なども入ってきてややこしくなる。

 基本契約書には次の事項を記載していく。

当事者の権限,合法性などについての確認
  外国企業の場合,契約当事者が確実に権限ある法人であるか確認が必要となる。

完全合意
  契約締結に当たって,さまざまな交渉が行われるが契約書が最も権威あるものとして宣言する条項である。口約束その他の合意に契約書が優先することを宣言することになる。

売買の目的物の特定,個別売買の方式
  個別契約成立の方式がどのような方式で行われるかを明示することになる。
  この時に品質をどのように決定していくかが問題となる。

価格決定の方法,支払い条件
  価格決定の方法については,発注に対する受注によって成り立っていく。
  支払方法については先払い,後払い,相殺勘定とある。
  会外取引では信用状が利用されるのが通常であるが,相手方が関連会社であるなど信用できる関係であれば送金による決済もありうる。

引渡・危険負担・所有権移転に関する取り決め
  本来引き渡し,危険負担,所有権は同時であることが望ましい。
  売主の責任がいつ果たされるとするかの問題となる。インコタームズと言って国際的な取引解釈基準が有り,引き渡し,危険負担などについて定めている。
  たとえば,買主指定の場所で引き渡すとなると,仕向港から指定の場所までの運送上のリスクまで売主が負担することになる。

検査の方法
  検査方法,検査に要する期間,完了通知,期間を徒過した場合の効力などを検討する。

品質保証条項
      品質保証と責任の範囲を明確化する。仕様書が明確であることを前提に「売主は、本契約に明示的に記載された事項以外には、商品性又は特定の目的に適合することその他何らの保証を行うものではない」旨の規定も有益だ。
  保証期間・クレーム提起期間を限定し、使用方法の不備,マニュアルに従わないなど故意・過失が認められる場合に免責させる旨を定めておく。
  保証違反の場合の売主の責任の上限(例:商品の代金額のなど)を限定する必要がある。「売主は、いかなる特別損害、間接的、派生的な損害、結果損害についても賠償の責めを負わない」旨の規定は有益である

不可抗力,免責条項

契約期間

債務不履行の場合の処理,損害賠償
  この場合,異常な高額な違約金が定められることがある。違約金や出荷の停止,不安の抗弁と言って相手が信用を失った場合の取引の停止などについて考慮しておく必要がある。

中途解約・解除条件

裁判管轄,仲裁契約,準拠法
    仲裁機関の利用と裁判の利用,準拠法など具体的に定める必要がある。