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№2216 製品不良と入荷禁止措置

№2216 製品不良と入荷禁止措置

不良が出た場合の危機管理はとても難しい
 不良が出た場合の危機管理は製造業者にとっては極めて重要だ。すばやい原因調査は必須だ。顧客との対応も難しい。

契約内容がきわめて重要
 不具合というとき,それは製品の契約上の仕様を満たしていないという意味になる。仕様を満たしたかについては検査によって決められる。そのため,仕様の内容,検査のあり方は問題を解決する上で非常に重要である。本来契約書にうたうべき事項である。

 実際,交渉の場では,契約上いかなる内容であったかをお互い言い合うことになる。

東京地裁の事例
 東京地裁の事例は複数の商品が数千個個単位で取引された事例だ。買主側は製品をNTTやソニーといったトップメーカーに納入していた。そんな中,受注側部品に不良が発生した。抜取検査で厳しい結果が出たので,買主は全商品について取引を中止し,売買代金の支払いも停止してしまった。すでに生産された商品も受け取らなかった。

受領拒絶した買主に2億円の支払いが命ぜられました
 製造業者からすれば,一方的に解除や受領拒絶されたため,2億3174万円の代金が未払いとなってしまった。こうして裁判になったのだが,判決文は生産者側(原告)の言い分を認め,発注者側(被告) に対して,約2億円の支払いを命じた(東京地裁H25.12.4判時2245号52頁)。

 判決文は,検査方法について契約上の合意がないため,契約解除できるとするためには「納品された製品を全体として見て,債務の本旨に従った履行とはいえない程度の不具合が存在することが,当該製品に係る取引を解除するために必要である」とした。

判決はどのように考えたか
 問題が多品種に及ぶため詳しく紹介できないが,一例をあげると,納品された商品4920台については,200台について抜取検査が実施され,最初の50台のうち7台に不具合生じた時点で検査が終了してしまった。

 最初の50台に7台不良があったからといって,残りの4870台に同様の不良があるとは限らない。裁判所は,残りの4870台についても,抜取検査が必要だと考えているようだ。
 同様に,納品前の商品については,全く検査が行われないまま受領を拒絶したが,検査がないのでそもそも欠陥があるかどうかもわからないと判断した。

本件では敗訴した側の教訓は次のようにまとめられる。
 ① 基本契約において検査方法,抜取検査方法を定めていなかった。
 ② 抜取検査に合格しない場合の処理について定めていなかった。
 ③ 問題発生後,サンプル試験などを実施したのであるが,適正なサンプル試験であるかについて製造業者との間で合意を作っておかなかった。

 これは契約を軽視して,2億8000万円の損失を被ってしまった事例だ。

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