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№2232 土地取引と土壌汚染

№2232 土地取引と土壌汚染

 土地が有害物質に汚染されていたり,廃材などのがれきが埋まっていたりした場合,当事者間では深刻な問題なる。そのため契約上の措置はかなり注意を要する。


契約上の4つのポイント
① 契約の目的を明確にする。
  汚染があっても当事者が納得していれば欠陥ではない。どこで納得していたかは契約の目的がどれだけ明確かで決まる。
② 土地の調査義務がどちらにあるか明確にする。
  調査といっても厳密さに限界がある。どの程度の調査でがまんするかは契約によって決まる。
③ 保証期間,つまりクレームできる期間を明確にする
    会社どうしの取引は商法526条によってクレーム期間が検収後6ヶ月以内に制限されている。私たちは除斥期間と呼んでいるが,この取り扱いを契約で決めておく。
④ 説明義務の範囲を明確にする。

土地の調査義務と検収
 調査・検収の関係は非常に難しい。判例に現れた契約条項をいくつか拾ってみた。

東京地裁 平成25年11月21日2013WLJPCA11218004
「万一,本物件について隠れた瑕疵(土壌汚染,既存杭・産業廃棄物等の地中障害物を含むが,これらに限らない。)があったときは,第5条の引渡しから1年間に限り,売主は瑕疵担保責任を負うものとする」

 判例はマンション用地から六価クロムが検出された事例でこの条文は1年間の間は責任追及できると読めるので,商法526条の6ヶ月の制約は排除されていると解釈した。

東京地裁H23.7.11判時2161号69頁
 「売主は本物件が特定有害物質を使用しない食品工場であり,事業主由来の土壌汚染が存在しえないことを理由に土壌汚染の調査をおこなわず,土壌汚染の調査は,買主の負担により実施するものとする。」

  調査義務は買主にあるとし,買主が調査したところヒ素が検出された事例だ。「事業由来の土壌汚染が存在しえない」という文言があり,ヒ素が天然由来であることから売主に責任はないとされた。天然由来の汚染は土地の欠陥ではないという判決だ。 

東京地裁平成21年 6月10日
「甲は,本物件に隠れた瑕疵(「土壌汚染対策法施行規則」別表第2,別表第3および別表第4に定める基準値を超える土壌汚染の他,産業廃棄物等の地中障害物,アスベストを含む。)がある場合,本物件の引渡し日から2年間にかぎり,民法第570条の責めを負う。なお,甲および乙は,本条において商法526条の規定は適用しないことを確認する。」

この条項は明確に除斥期間を排除している。買主にとっては理想的な条項ということになる。

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