№2121 プロジェクト管理責任
システム開発は発注側(ユーザー)も受注側(ベンダー)も大変な労力をかけて進める。それだけでも金額は巨大だ。専門性が高いだけにトラブル発生時の労力も半端ではない。
システム開発は両者の「共同作業」であることを肝に銘じて絶えず信頼関係を大切にする姿勢が必要だ。
買主側は多くの望まないことが肝要だ
買主側としては,システムに対してあまり多くのことを望まず徐々に増やしていくというような発想が必要のように思う。
特に,こうした契約では買主側にも協力義務があって,情報提供や受け入れのための体制構築する責任があることを心しておく必要がある。普通の売買のように何でもやってくれると考えないほうがいい。
売主側はマネジメント責任がある
売主側としては,システム構築責任が当然あるのだが,プロジェクト全体の進行について全体をマネジメントする責任がある。
プロジェクト進行が遅れたりすることをユーザー側の責任にしないように心がける必要がある。時には「これ以上は追加の機能を求めない」とか,「プロジェクトは達成できない」などユーザー側の気持ちを害することがあっても強い姿勢が必要となるだろう。
マネジメント責任で地裁・高裁で明暗を分けた事例
システム開発にかかわるトラブルの多くはこの「ユーザーの協力義務」 vs.「ベンダーのマネジメント責任」との争いとなる。
北海道の病院システムの事例がある。
病院側(ユーザー)・・・・19億円の損害賠償請求
システム側(ベンダー)・・23億円の損害賠償請求
[旭川地裁(H28.3.29)]
ベンダー側の責任を認めている。「自らの処理能力を正確に見極めることないまま,原告からの追加開発要望に応じたことについては,重い責任がある」とし,プロジェクトを適切に管理しなかった責任がある。
[札幌高裁(H29.8.31)]
札幌高裁は地裁判断を覆している。
「システム開発はベンダである被告の努力のみによってなし得るものではなく,ユーザである原告の協力が必要不可欠であって」とし,協力義務違反があるとした。本件事情下では「追加工事を毅然として拒否したりする義務」まではないとしている。
システム構築では契約段階で全てを決めることはできない
通常の取引のように紛争を予想することに限界がある。そのため,契約履行過程での信頼関係はとても重要だ。信頼関係はものを言わないで許すところで築かれるという訳ではない。正確に状況を伝えて理解し合うことから始まる。そのための議事録,メールのやりとりなど事実,決めたことなど簡潔にわかるよう精錬させていく必要がある。まちがっても感情的な内容を入れ込んではいけない。
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