名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

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№1835 がんこなばーさん

№1835 がんこなばーさん

 籠橋家には83才になるばーさんが君臨している。籠橋家ではばーさんを生きたご先祖としてあがめ、私は毎週お参りに行くし、子供たちも帰省のたびにお参りに行くことになっている。私の甥などは大阪からわざわざ出向いてお参りに来ていた。

 洋服の行商で家計を支え、団地住まいからあこがれの戸建て住宅を手に入れた。
 このばーさんもさすがに、最近は記憶が低下してぼけてきた。

 うなぎが大好きだが、「西本」という名古屋の老舗でしか食べない。別のところでも食べるが、「やっぱり西本は焼き方が違うでいかん」とか、「味は西本だわ」とか、いろいろうるさい。

 弁当は食べない。様子見もかねて週一回弁当を頼んだのだが、「あんた勝ってなことをして」「私は弁当を食べん人だからね」「冷たくなってまったご飯なんか食べれえせんがね」「違う人の味なんか食べれんわ」といろいろと言う。

 あげくの果てには「いままで弁当なんか食べたことない」と言ってのける。「えー戦争中日の丸弁当たべとったのと違うの」と言っても、「食べたことない」と言い張る。

 薬も飲まない。正露丸と百草があれば、全ての病気は治ると信じている。ちょっと何かあると「百草のんどきゃあ。」「はよ、飲みなさい」「早くぅ」「百草飲んだすぐ治るでね」と目の前で飲むまで譲らない。

 痴呆防止の薬も「あんなのは医者が勝手に出した」「薬はきかん」と言い張る。子供が心配しているんだから飲んでくれというと、「忘れた方が人生しあわせなんだわ」と怒り出す。子供が心配しているから飲んでくれと言っても、「心配するのは当たり前のこと」と居直る。「ともかく、何を言われても飲まんものは飲まん。」と言い切ってしまう。絶対、飲まない。

 細い道は大嫌いで、自動車に乗っても広い道を通れという。「どうして、そんなところ通るの、あんたもおとうさんと一緒だわ。急がば回れだよ。広い道、通りゃあ」と何年も前に死んだじいさんまで引き合いに出される。うるさくて仕方がない。

 ばあさんからは弁護士という職業は大変らしい。「苦労ばっかりで、弁護士にせんときゃあ良かった。」とまるでばーさんが弁護士資格を与えたみたいなことを言う。

 とまあ、いろいろあるのだが、あとはポックリ死んでしまえば幸せだと思っている人に何をいっても説得できない。ということで、わたくしも、もういいわ、ともかく、この際、生きたご先祖として君臨していただくことにして、好きなようにどうぞという感じになっている。

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