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№1592 医療法人のお家騒動

№1592 医療法人のお家騒動

 医療法人ではしばしばお家騒動が起こる。
 たとえば病院創立者の院長と跡取りの長男との病院経営を巡って争いになることはしばしばだ。特に院長がかなり贅沢に慣れてしまい,院長退職後も浪費が続いてしまうような場合などがそうだ。

 そうでなくとも,相続をめぐって兄弟間が骨肉の争いを繰り広げることも珍しくない。
 どうでもいいことかもしれないが,「跡取りの妻」がやり手だったりして,争いの原因がみんな「嫁のせい」にされてしまうことも普通にある。

 医療法人のお家騒動は「医療法人」という非常に特殊な世界だけに問題はさらに混迷しているように見える。
    ※ 医療法人の一般的解説はこちら
        
 福岡高裁H26.3.26(判時2242号67頁)はこうした内部の紛争の一つだ。
 この事件は院長が社員総会で除名されてしまった事例だ。院長が破産する前に長男に贈与したというので払戻金があるかないかが争われた。

 平成19年医療法改正前には出資持ち分のある医療社団法人が認められていた。持分があるということは,医療法人の社員(構成員)を辞めたときには出資持ち分の払い戻しが行われるということになる。

 社員(たとえば院長)が退社前に持分を譲渡することができるかは大きな問題の一つだ
。医療法には特別な定めはない。上記の福岡高裁は退社前の譲渡を認めた。

 ところで,持分の譲渡について,譲渡を承認する社員総会が開かれていないことも問題なったが,確かに社員総会はないものの,譲渡後の社員総会の運用が,譲渡があったことを前提としたものであるとして実質的には承認があったと言えると判断した。