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№1131 従業員の持株

№1131 従業員の持株
 株式会社会社では従業員に自社の株式を持たせ、さらに持株会を作っているところがけっこうある。

 大企業の場合、これが福利厚生の一環となっている。市場価格よりも割安に株式を割当て、それを持株会で運用してもらうことによってきちんと配当をもらうというものだ。会社が大きくなれば退職時に売却すれば株価が上がっているから利益になる。会社にとっても安定的な株主を確保できる上、従業員の忠誠心も涵養できる。

 中小企業であっても、社員に自社の株式を割り当てている例は意外と多い。
 でも、実際従業員にとってどんなメリットがあるのか分からない例も少なくない。つまり、中小企業の場合、配当がない場合が多いし、株主総会も開かれないままになっていることがある。そういう場合に会社の株式を引き受けたからといってどんなメリットがあるかはよく分からない。

 実際、社員が退職時になって株を買い取って欲しいとか、社長が亡くなって相続が発生すると株式はどうなっているんだとか、M&Aで会社を売却する時になって株主の構成が問題になる場合がある。従業員持ち株制度は本当に小さい企業には余り向いていないかも知れない。

 ともかく、会社としては従業員持株制度を活用するのであれば、その利害得失をはっきりさせ、きちんと法的枠組をしておく必要もある。

 法的枠組からすれば、一番重要なのは買取制度を作っておくということになろうか。
 たとえば、「会社を退職した場合には従業員持ち株制度に基づいて取得した株式全部を会社もしくは会社の指定する者に取得価格にて譲渡しなければならない。」というような条文ということになろうか。

 株式は譲渡自由の原則(会社法127条)というのがあって、それを著しく制約する契約は無効とということになる。取得価格が従業員だということで割安であったような事情、取得中何らかの配当があったような場合など持ち株制度の趣旨をよく理解して株式を取得したような場合には問題は無いということになる。この条文によって株取引が無効になってしまうのはまれだと思う。