№1424 組織と生態学とのメタファー(弱肉強食はウソ)
資本主義社会は弱肉強食の世界だ。シマウマはライオンに食べられる。強い者が弱い者を食いつぶし,支配していくというような言い方でたとえられる。
これはウソだ。
生態系の中ではライオンは最も弱く,滅びやすい。それは環境適応能力が低いからだ。シマウマは食べられても食べられても繁殖する。どちらかというと草食獣の方が環境適応能力は高そうだ。経営だって同じ事だ。強さは環境への適応力に比例すると思う。
このように,経営学の世界でもよく自然界を比喩に経営のことが説明されるらしい。
たとえば「進化」
「組織は戦略に従う」というのは有名なテーゼだ。これはまず事業の戦略があってそれに最もふさわしい組織形態はな何かという思考方法がとられるべきだというのである。今ではこの考えは経営者の常識になっている。
この場合,組織はどのように形成され,どのような組織が生き残っていくかということが検討される。その場合に「進化(evolution」という言葉が使われるらしい。
経営学における進化的視点とは,まず,組織側に何か新しいきっかけ(変位)が発生し,それが環境に適応するかとうかという基準で選択し,生き残った組織が適切な組織だというように考える。
でも,組織の場合,変な組織も残ってしまうことがある。組織には「構造的慣性 (structural inertia) 」というものがあって,中々変えられない。安定したメカニズムを壊すことで,損失を招いてしまうこともあるからだ。
組織の安定と変革,これは経営者の永遠の課題だ。ドラッカーは撤退に対する決断も経営者のつとめであることを協調している。それは変化への第一歩だからだ。この場合,選択の基準が問題となる。
もっとも,進化論や生態学にたとえるのはおもしろいが,だからどうだという気もする。おもしろいだけで経営には直接役立たないかも知れないね。しかし,弱肉強食はナンセンスということが分かるだけでも功徳になるかもしれない。