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№1130 深川洲崎十万坪

№1130 深川洲崎十万坪
 安藤広重と言えば、「東海道五十三次」、日本橋から京都三条大橋まで多彩な風景画を残したことで有名だ。優しく緻密な画風は、同じ風景画でも葛飾北斎とはずいぶん違う。旗本だった安藤広重家督を譲って画家として独立したのが36歳、同じ年、東海道五十三次で鮮烈デビューを果たした。

 安藤広重は晩年名所江戸百景を描いている。その中で私が特に注目したいのが「深川洲崎十万坪」だ。空高く飛んだ鷲の視点から、深川州崎十万坪が描かれている。深川州崎は雪が降っているのか全体にぼんやりと描かれている。広大な敷地は緻密に一つ一つ描かれているわけではない。ただぼんやりと、それでいて全体がとらえられている。

 絵には鷲の鋭い目線が美しく描かれている。その目線は、川に浮かぶただ一つの「桶」に注がれている。この桶は点のように小さいが、漠然と広がる風景の中で唯一具体的に描かれている。天空を飛ぶ鷲と広がる深川州崎の風景とはこの鷲の目と風景の中の桶との間で結ばれた見えない「糸」で初めて具体的に結ばれている。

 私はこの絵がつくづくおもしろいと思うのは、私達が何か大きなものを全体的に見る時には必ずこの絵のような「糸」を持つのではないかということだ。私達は時には大きな歴史の流れを眺めることがある。大きな経済の流れを読もうとする時がある。中国の動きを知りたいと思う時がある。そんな時、私達はどこかに視点を持つ。

 つまり、今、私はグローバリゼーションという大きな経済の流れの中に身を置きたいと思っている。中小企業、それも製造業からの視点が私の最も重要な視点だ。上海や天津、中国国内の中小企業製造業の事業活動が私にとって、「深川洲崎十万坪」に描かれた「桶」に相当する。「桶」に集中することで、私は刻々と変化するアジア経済の大きな動きがぼんやり心につかむことができていると実感する。