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№1158 迂回融資は無効

№1158 迂回融資は無効
 迂回融資について銀行に落ち度がある場合には無効となる場合がある。

 「名前だけ貸してくれ、絶対に迷惑をかけないから。」、苦しくなった経営者は何でも言う。実際に迷惑をかけないなどということはあり得ない。迷惑をかけないくらいの実力があるなら、人に名義貸しを依頼することなどない。経営者は名義貸し、融手は絶対に関与してはならない。

 名義貸しは原則有効で、名義通り借金を背負うことになる。名前だけのサインのというのはないと心得るのがよい。

 しかし、迂回融資で無効となる場合がある。
 総会屋などが銀行融資担当者と結託して、他人名義で借り入れすることがある。自分では借りることができないものだから、社員などの名前を利用して住宅ローンなどの契約を締結する。融資は全額受け取り、月々の支払も総会屋などが支払っていく。そして、そのような事情を銀行担当者が知っているような場合が典型的だ。

 そのような迂回融資について最高裁民法93条1項但書きによって無効であると判断する(最判小二H7.7.7金法136巻31頁)。民法93条は心裡留保と言って、本当は債務を負担する気持ちがないのに外形上の行為は債務負担行為をするような場合を言う。原則はそのような場合でも有効で、相手が知っていたりした場合には無効となる。迂回融資も同様だというのである。

 もっとも、どのような場合に無効とするかについてはいろいろな事情を考慮することになる。名義人の地位、資力、信用、担保提供の有無や、貸主が迂回融資にどの程度関与していたか、名義人も利益を受けたかどうか、貸主と名義人との関係など総合的に考慮されることになる。難しい議論だが、誰のための融資であったか、誰を信用して融資されたか、貸主側にどれほど関与があったかといったファクターが重要だろう。

 なお、最近の事例だが、多額の融資を受けるに際して取締役会の決議が必要だが(会社法362条4項2号)、その決議がないまま社長が独断で借り入れた事例について、銀行側が知っていたという理由で貸付そのものが無効となった事例がある(東京地裁H24.2.21判時2161号120頁)。