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№1157 社員の定着と会社の発展

№1157 社員の定着と会社の発展
 昨日聞いた会社は就職支援事業、採用コンサルティング事業などを目的としている。社長は1987年に株式会社リクルートに入社して営業を担当し、仕事一筋で働いてきた。実績をあげ27才の時には管理職になったが、あえて完全出来高制の社員の道を選択した。営業の前線に立ち続けることにしたのである。事実上の社内独立であるが、実績はさらにあがり、年収は何百万円から何千万円となっていった。

 39才で独立した。
 現在では社員も定着し、事業は順調に伸びているが、そこまで行き着くのが大変だった。社員が定着しないのだ。

 創業当時、彼女は「会社は仕事をするところ、仕事を極めて自分を磨くところ」と非常なストイック信条を持っていた。これはリクルート時代に鍛え上げてきた彼女の信条だろう。そして、自分と同じもの、つまり「精進」して個人としての実力を伸ばしていく、そういうものを社員に求めていった。「仕事だけをしにこの会社にきたんじゃない。」とは、辞めていったある社員の言葉だが、彼女の心に残っている。

 しかし、社員が定着しないのは彼女が社員に求めたものと社員が求めているものとは異なることになったからだ。社長はあらためて自分の人生を振り替えることにした。子供ののころから就職し、独立するまでの人生の流れを文章にした。

 自分の人生を振り返ったということは自分がどんな人間になっているかということを改めて見つめ直すのと同じ事だ。ストイックであるあまり、人とのコミニュケーションにかけていたのではないか、自分の考えを絶対化して社員の人生を否定していたのではないか、相互の緊密な信頼関係は本当にあったのか。

 こうした問題に気づき社内を改善していった。社員とはよく話すように心がけた。社内にキャリアデザインをつくりあげ、この会社にいることで社員がどのような人生を作りあげることができるかを例示した。社長も含めて社員がお互いに成長していく関係になることが大切だとも思った。

 たしかに、会社は仕事だけの場ではない。社員にとっては友人を作ったり、社会との接点を持ったりする場でもある。誰もがストイックに生きることをよしとしているわけでもない。会社は楽しくなくていけない。会社によかったと思えるのは楽しく、人生を作っているという実感がわくからだろう。