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№2357 「ティール」と「アメーバ」違いは何か

 京セラ稲盛経営哲学では「率先垂範」という言葉がある。リーダー自らが先頭に立って任務に突き進むことで他の従業員は感化され「率先垂範」の社内文化が築き上げられていく。稲盛経営哲学ではリーダーの役割は格段に大きい。

 

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アメーバ経営

 このようにリーダーの役割が重視される京セラだが、アメーバ経営という手法でこの発想は全社に徹底されていく。アメーバ経営では会社をアメーバと言われる単位に分けて、これを仮想経営体にしている。リーダーは仮想経営体の仮想社長だ。経営はアメーバごとの自主管理に任されている。アメーバ単位ごとの完結した会計が実施され、各単位は利益率10%以上を目標に運営するよう指示されている。

 

「時間当たり」の生産性

 各アメーバでは平均的社員の時間当たりの生産性が出され、「時間当たり」が利益率と共に重要な目標となっている。この目標は罰則でしばられている訳ではなく、ただちに報償という形で結びついているわけではない。しかし、アメーバのリーダーが成果を上げ、かつ、京セラフィロソフィと言われる経営哲学の理解度が高いと判断されれば、よい高いレベルのリーダに抜擢されていく。

 

ティール型企業の本質は自主経営にある

 ところで、「ティール組織」(英治出版)においても、職場は15人から20人といった小さな単位に分かれ(おそらく京セラのように仕事の内容によって単位の大きさは違う)、単位内で自主管理が行われている。しかし、京セラは一方で上意下達のトップリーダーの強い統制力を持っている。

 

どちらも社員の主体性が発揮される

 どちらも自主性が発揮されるので、社員のマニュアルにない活躍が推奨される。アメーバを取り入れたJALではCAの顧客に対する自主的判断による気遣い、非常時における顧客のための自主的工夫が推奨され、賞賛される。ティールでもマニュアルにない動きをすることが(そもそもマニュアルがない場合もある)求められる。全てをマニュアルで縛ろうとするマクドナルドとは真逆の経営スタイルだ。

 

ティール組織はリーダーがだんだん減っていく

 しかし、ティール組織とアメーバ組織は違う。ティール組織ではトップリーダーの役目は消えていく方向で組織が発展していく。アメーバではリーダーの役割が強調され、経営十二箇条などリーダーの資質が絶えず追求され、強いリーダーシップとは何かが社内文化として追求される。

 

ティール組織では次のような文章がある
 「FAVI(フランスの自動車部品メーカーティール型の例としてあげられている)では機能別の組織構造はもはや消えてしまい、したがって経営陣のミーティングもない。組織のトップにミーティングがないのだ!かつては営業、製造、保守、財務、人事など各部門のトップが集まった会議が毎週開かれていたが、現在はチームごとのミーティングだけである。」

 ティールの純粋型ではリーダーはいない。

 

両社とも仕事と人生を重ね合わせる

 両者とも高い水準の仕事を成し遂げることで人生が充実すると考える。ティールは「エゴを捨て」といい、アメーバでは「利他の心」というところも似ている。いやなことを押しつけ合う関係を否定し、誰もが相手を助けてくれるという信頼関係も大切だと言う。どちらもいやな仕事を押しつけ合うことはしないという文化がある。

 

「人格の高み」の意味が違う

 しかし、「仕事をしているという人生」、これを楽しむ場、自分を解放する場ととらえるか、ストイックな修行の場ととらえるかに違いが出ているような気がする。 たぶん、この違いは「個人の自由」に対する考え方の違いや、人格的な成長の意味の違いを反映しているのではないだろうか。

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