№2224 債務免除に源泉徴収義務が発生?
役員に対する債権放棄には源泉徴収の問題が発生します
役員が会社から借り入れすることは少なくない。なんやかんやといろいろたまり,数千万,時には億の単位のお金になることもある。どうにもならないということで債務免除した場合,源泉徴収義務が発生するだろうか。
所得税法28条はおよそ利益であれば源泉すべしとしています
所得税法28条は「給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費収び賞与並びにこれらの性質を有する給与」と定めている。社長であることを配慮して,貸付金を免除してしまうと職務などの対価とされてしまい給与となる。給与として支払う場合には源泉徴収義務が発生する。
この事例は青果などの買い付けに関わる事業を行う団体(権利能力なき社団)だったが,組合長が借り入れしては有価証券取引などに使い込み,その金額は55億円にものぼっていた。そこで,団体は一部返済させ,その上で債務免除した。
この債務免除に対して,課税庁が源泉徴収義務があったとしたのである。55億円の給与に対して,実に19億円の源泉徴収の納税告知処分が行われた。この驚くべき数値に驚愕したのは察するにあまりある。団体は告知処分の取消を求めて提訴したが,結局課税されてしまった。
債務免除に源泉って,どうしろっていうんだ
しかし,債務免除していて,一方で源泉徴収しろというのはどうしたらいいのでしょう。例えば,不良債権化し回収不能であれば免除益は発生しない。債務免除で源泉するのであれば,いくら分不良債権化しているか推し量って源泉することにになる。そんなのはできっこない。最高裁は無理難題を押しつけて平然としているとしかいいようがない。。
この事件は2度最高裁に係属しています
この事件は差し戻され,平成30年に再度最高裁に係属することになる。このときには錯誤が問題になった。つまり,こんなに源泉をとられるぐらいだったら債権放棄しなかった,だから債権放棄そのものが無効だという主張だ。もちろん,こんな主張は通用しなかったが,最高裁は債権放棄に際して錯誤となる場合がありうるとは言っている。租税法分野では珍しい判断だ(最判H30.9.25)。
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