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№1996 税理士過誤、3億円請求事例

№1996 税理士過誤、3億円請求事例

 最近は企業の相続対策がさかんだ。税金をいかに安く片づけるかは大きな課題となる。
 そんな中、最近、相続税対策について説明を誤った税理士が3億2902万7820円支払うよう命じられた判決が出た(東京地裁H28.5.30、判タ1439号233頁)。税務過誤というのはかなり恐ろしい。

 本件は相続税対策としてデッド・エクイティ・スワップ(DES)を提案したという事例だ。債務超過会社があって、オーナーは会社に多額のお金をつぎ込んでいた。そこで、この債権11億円のうち、9億9000万円分を現物出資して、株式を割り当てた。

 DESを実施した場合、債権は券面額ではなく時価評価される(法人税法2条16号、同法施行例8条1項、平成18年改正)。そのため、現物出資する債権の券面額と時価の差額は債務消滅益として取り扱われる。
 なお、DESについては法改正前は時価評価しないという東京地裁判決があったため、債務消滅益はないという扱いが実務的に行われていた。

 ともかく、税理士はこの債務消滅益について説明しなかった。むしろ、この場合債務消滅益は発生せず課税されないと説明した。しかも、確定申告に際してはDESが無かったかのようにしてごまかして申告した。

 判決では専門家である税理士には高度な注意義務が課せられるとされている。その結果、3億円を越える支払いが命ぜられた。

 なお、DESについては、時価評価した場合、会社再生にきたす場合がある。つまり、会社が傾いた場合、オーナー、時には銀行などが支援措置をとり、資金を提供していることがほとんどである。この場合、会社の債務を軽くするために債権放棄をしてもらう必要があるが、このような場合に債務消滅益が評価されて多額な課税があると、それが大きな障害になる。

 そこで会社更生、民事再生など法的整理においてDESを実施する場合には、DESにより発生する債務消滅益を期限切れ欠損金と相殺することを可能として救済している(法人税法59条1項1号、2項1項)。

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