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№1863 請負工事が中断したときの処理

№1863 請負工事が中断したときの処理

 請負工事が途中で中断してしまうことがある。
 工事代金を払わないために中断するというのは別の手段となるが、たとえば、施主の準備が遅れたために工事ができない場合があるが、そいういう場合はどうなるだろうか。

 請負契約というのは対価を支払って仕事をしてもらうという契約だ。仕事する場合にも自分だけでできればよいが注文者側の協力が必要な場合がある。たとえば、契約を結んで前工事が終わらないためになかなか自分の工事に入れない場合がある。こちらとしては材料もそろえ、人も用意したのに工事に入れないのでは大きな損害だ。

 あるいは、ある程度工事が進んだ段階で設計のミスで最後の仕上げができない場合もある。ほとんど工事が終わっているのに相手の責任でいつまでたっても検収が完了しない場合もある。

 こうした場合はいつまでも契約に拘束させる訳にもいかない。いつ始まるか分からない工事のために人を待機させて置くにもいかなので取扱が非常に難しい。

 土木や建築工事の方面であれば出来高がかなりはっきりしているし、出来高払いの慣行もある場合が多いので、途中で工事をやめてしまうというのもありうる。しかし、たとえばソフトウェアの設計・開発というような請負となると話がとてもややこしい。

 判例の原則からすれば次のようだ(最高裁昭和52年 2月22日民集 31巻1号79頁)。
  ① 受け取り側の非協力がある場合でも、直ちに解除することはできない。
    つまり、工事を受け取るというのは権利であって義務があるとは限らないからだ。
  ② しかし、受け取り側の非協力がある場合は、度を越すと履行できない状態と見なされてしまう。私たちはこれを履行不能と呼んでいる。
  ③ 契約途中に履行不能になった場合で、その原因が受け取り側にある場合は請負業者は請負代金の請求権が無くならない。

 つまり、私たちの用語で契約成立後から履行不能になった場合、「危険負担」という難しい議論に突入する。これは民法の中でも特に難しい議論だ。

 この場合、受け取り側に責任があるのだから、履行不能になってしまったことについて責任を負うべきだ、つまり請負代金を支払えということになる。

 民法第536条2項はこんな風に書いてある。
「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。」

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