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№1339 インドネシア,英文契約書無効事件

№1339 インドネシア,英文契約書無効事件

 ビジネス系雑誌を読んでいたら,最近のインドネシア判例が紹介されていた。英国法人がインドネシア法人に対して約442万米ドルを貸し付けたところ,契約書が英文だからその契約は無効だというのだ。
 
 この裁判は2013年7月に西ジャカルタ地方裁判所で下された。英文の契約であろうと,インドネシア語の契約であろうと,意思の合致さえあれば契約なのだから無効になるというのは本来あり得ないことだ。

 インドネシアには2009年に「旗,言語,国章及び国家に関する法律」というが成立しており,この法律の31条によればインドネシアの法事や個人が関与する契約書にはインドネシア語を用いなければならないとされているという。この事例はこの法律に違反するから無効としたらしい。

 雑誌の解説によると,この法律については違反した場合の規定がない。法務人権省はインドネシア語が利用されなくても契約が無効となることはないとしていた。しかし,西ジャカルタ地方裁判所は政府の見解を否定した。
 
 この判決にはかなり批判が多いらしい。当然のことだ。グローバリゼーションにあって,英語はすでに共通とになっている。日本人と韓国人と中国人がそろえば共通語は英語だ。私も中国や韓国の弁護士とつたない英語を交えながら話をしなければならない。
 
 私の経験では東南アジアの英語化は日中韓の東アジア圏に比較して格段に進んでいるように思う。インドネシアの弁護士と会ったときもみな英語話していた。こういう状況下で英語の契約書の効力が否定されるというのは信じられない。特殊な判決例として控訴審で否定されることになるのではないだろうか。もし,この判決がまかり通るようであればインドネシアの経済も暗い。