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№976 部材に欠陥があった場合の処理

№976 部材に欠陥があった場合の処理

量産品の欠陥は被害が半端ないです
 製造業ではメーカーに大量の商品を納入する。売上げも大きいが、商品に欠陥があった場合にその処理が大変となる。賠償金のために倒産してしまう会社もある。万一不具合が発生した場合には必ず弁護士と相談しながら処理を進めなければならない。実際の現場ではどのようになっているだろうか。

量産品に欠陥があった事例
 紹介の事例は住宅床材に欠陥があった事例だ。ミサワホームが新しい床材を南海プライウッドに発注した。この床材には特殊印刷が使用されており、特殊印刷部分について、南海プライウッド大日本印刷に発注した。この特殊印刷に欠陥があったために、建設後2年以内に表面化粧柄が剥離するという不具合が生じるようになった。この不具合について、大日本印刷は賠償することとなった。

現場ではどのように処理されたか
 裁判では南海プライウッドが過大な補修を行った結果、請求賠償金額が多くなりすぎているかという点が争点となったが、ここでは、南海プライウッド大日本印刷との契約関係はどのようなものであったか紹介したい。

用途性能発注方式
 南海プライウッド社は大日本印刷に対して化粧シートの製造を依頼したのであるが、それは口頭の契約であった。契約書はない。印刷については南海プライウッド社は専門的な知見を欠いていたために、化粧シートの仕様は指定されず、ミサワホームの要求に適合するシートという内容の発注であった。これは用途性能発注方式とよばれるもので、受注側が一定の範囲で性能を保証し、結果に対して責任を持つというものだ。

売主が不備の解明をおこなった
 大企業の場合、部材の不具合に対する原因究明のシステムがかなり完備している。部材に欠陥がある場合には自社の専門部署が検討して報告書を作成する。本件では大日本印刷側が不具合を解明して報告している。中小企業ではこの作業だけでも大変な費用がかかる。

本件における和解内容
 南海プライウッド社とミサワホームとの間では「本件不具合を原因とする修補工事の保証期間を10年間に延長する」ことで合意された。

 南海プライウッド社と大日本印刷との間では、このような保証については合意されなかった。大日本印刷は10年の保証期間は長すぎるとしたのだ。「しかし、最終的に、社内での責任問題に発展する可能性があるため、誓約文書の提出は断ったものの、営業協力金名目で上記費用の2分の1を負担することを合意した。」

 南海プライウッド社はこの合意に基づき、ミサワホームに対し、7億6139万3140円を支払い、大日本印刷は営業協力金の名目で4億2700万9282円を支払った。

ミサワホームがさらに大きな要求を行った
 この事件ではさらにミサワホームが24億円の賠償請求を南海ブライウッド社に行った。これに対し,南海ブライウッド社はミサワホームは顧客(消費者)に対し,総額24億円の過大な保証をしたのではないかと争い、ミサワホーム南海プライウッド社、大日本印刷との間で訴訟になった。

判決文は一定の範囲で賠償を認めた
 判決主文はちょっと複雑だが、南海プライウッド社はミサワホームに対して12億3447万7296円の支払いを命じられた。その上で大日本印刷南海プライウッド社に対して、同額の支払いが命ぜられている(東京地裁H23.3.3、判タ1363号100頁)。

 これは大企業の事例だが、中小企業でも部材をメーカーに納入する。例えば自動車エンジン部品などは大量となると被害も甚大だ。

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