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№915 事業分析と予防法学

№915 事業分析と予防法学
 日本の事業者は企業防衛について事業に必要なコストと考える意識が希薄だと言われている。法律顧問の役割はいざというときのための用心棒であるという意識になっていて、日常的に相談して企業防衛に役立てようという感覚に乏しい。法律対策のコストをほとんど無駄だと考えているむきがある。

 日本の弁護士の場合、紛争が生じた場合に訴訟など法的手段を武器に対応するというのが通常の姿だ。実際のトラブルが起こってから対応する場合に弁護士は役立つようにできている。

 しかし、予防となると弁護士がどれほど役立つかは企業にとってもよくわからないところがある。日常的にうまく仕事がまわっていれば特に法律家の役割は不要だと考えていることが多い。実際、日本の企業の場合、取引当事者相互の信頼関係が強いため訴訟になることは少ない。

 本来予防法学と言うとき、事業の実態に即して必要な法的予防手段を講じることが求められる。この事業の実態に迫れなければ予防策を講じようにも講じるすべがない。そのためには弁護士にも経営学的な基礎知識と、顧問先の経営実態に迫れるだけの信頼関係を形成することが必要不可欠だ。

 何よりも大切なのことは企業のための法務においては弁護士は「経営」についてぶれない思想が必要だろう。もちろん、弁護士は経営の専門家ではない。事業そのものの専門家ではない。にもかかわらず弁護士が役立つのは経営に関する明確な問題提起ができるからだ。そのためには基本的な思想がしっかりしていること不可欠だ。私がドラッカーを重視するのは経営についての思想を明確にしておかなければ、顧問先と「ともに考える」姿勢を作ることができないからだ。

 結局私たちは次のようにして顧客である事業者に接する必要がある。
 ① 事業目的は明確であるか。
 ② 当面する危機、当面想定される危機は何か。
 ③ 危機を乗り切るための当面の方策は何か。
 ④ 危機を乗り切るための当面の方策実施について検証基準は何か。