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№1107 会社の債務、社長のうつ病

№1107 会社の債務、社長のうつ病
 中小企業法務の中で債務対策は重要な分野の一つだ。経営者は債務の問題に常に悩まされる。

 しかし、日常的に債務が存在することがあるで、いつのまにか借金に対して不感症になっているかもしれない。「金なら銀行にある」と思っているかも知れない。「借金は経営者の甲斐性」と勘違いしているかも知れない。私はこれは大きな誤りだと思う。

 借金の原則は次の2つだ。
 ①借金は無いに超したことはない。
 ②利益を生み出す借金のみを行う。

 経営者たるもの日常的に借金の減額を心がけなければならない。長期的にみていつどのどの程度まで減らせるか常に経営上の計画を持っている必要がある。もちろん、運転資金という考えもあるだろう。短期融資にしても、必ず短期で返すというのが原則だ。きれいごとではない。この原則は徹底する必要がある。徹底できず、根雪のように借金が積もり抜き差しならないところまで追い詰められることもある。

 次の事業展開が見えないのに借金はするべきではない。借金は常に利益を生み出すためにする。この思想の徹底も必要だ。もちろん失敗もあるだろう。失敗をおそれないことも経営者のつとめだ。しかし、「次」を見ないまま借金はするべきではない。

 借金のために社長がうつ病になることがある。
 借金の重圧がどれほど恐ろしいものであるかは実際に危機に立ってみないと分からないかも知れない。日常的に借金のある会社にある日、リーマンショックのような突然の打撃があることがある。得意先が倒産して売掛金の回収ができないことだってある。

 そんな時、協力企業への支払、仕入代金の支払、社員への支払、税金や社会保険料の支払い、新規融資獲得へのやりくり、それに追われ、あしたには資金ショートするかもしれないという恐怖にさらされる。こういう重圧がいつしか社長の精神をむしばんでいく。

 ある者は、重圧のために判断力を失い、むやみに借金するかもしれない。ノンバンクに手を出し、さらには手形貸しに手を出すかも知れない。あと100万円足りないから消費者金融に手をだすかもしれない。友人や親族に借金を頼むかも知れない。親や親友を連帯保証人にして経営危機にまきこんでいくかもしれない。自殺による生命保険金で借金を返そうなどということも考えるかも知れない。

 ある者は、重圧のために、気力をどんどん奪われていくかも知れない。自分が何を考えているか分からない。眠れない。食欲もない。資金ショートの恐怖が社長を奈落の底に突き落とす。そして、ある日突然社長がいなくなるのだ。

 私はすぐれた会計事務所、顧問弁護士は必要だと思う。中小企業の場合、技術的にすぐれたという意味だけではなく、強い重圧にあっても社長が正常な判断ができるようサポートできる、社長と同期化できるような経営に踏み込める専門家が「すぐれた」の基準だろう。私はこうした法律家の姿勢を「戦略的」と呼んでいる。