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№484 「仕事」と「仕事する」

№484 「仕事」と「仕事する」
 ドラッカー「マネジメントⅡ」に入った。
 最初は、仕事について展開している。
 
 ドラッカーによると、「仕事」と「仕事する」とは異なる。仕事は労働の結果であり、産物である。「もの」に近く、人と切り離して対象化できる。しかし、「仕事する」となると人と切り離すことはできない。人は仕事だけで生きているわけではないし、仕事に求めるものも生産性を求めて仕事しているわけではない。職場の人間関係であるとか、生き甲斐であるとか様々な要素が入り込む。
 
 当たり前と言えば当たり前だが、ドラッカーはさらに労働をいくつかの側面に分析する。
 ① 人間は機械と異なり生理的側面を持っている。
 ② 労働には心理的側面、価値観の側面がある。
 ③ 仕事は地域や社会との絆を生む。
 ④ 仕事は生計の糧であり、経済的側面がある。
   資本の蓄積との対立は避けられない。また、生活の糧としての賃金と生産コストとしての賃金の対立がある。この分配に関する問題は解決できない対立である。
 ⑤ 組織における指揮関係が存在する。
   権限をどのように分配するか、利益をどのように分配するかについては解決不能な難しい問題がある。
 
 このようにいろいろあるが、ドラッカーはどれも真実だという。どれかが本質だなどと思ってはならないというのである。確かにそうだ。古典的経済学者や、マルクス主義者が労働と資本、所有の関係を分析したが、それは生身の人間の一側面でしかない。
 
 私がドラッカーの視点で重要だと思うのは、様々な矛盾点、例えば賃金をコストとみるか生活の糧とみるかなど、それは明快な解決のない問題であるとする点である。常にせめぎ合いは存在する。マネジメントの役割はそれを「緩和」する程度のことだという。
 
 確かにそうだ。ではどうしたらいいだろうか。
 それは、矛盾する問題として、解決に向けて行動することが重要だ。労使の関係は固定した関係はない。時宜に応じて変化する。こうした変化を読みより、変わること、変わり続けることが大切だ。
 
 私は解決そのものより、解決をめざし続ける「過程」に価値があり、マネジメントの真の意味があるように思う。