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№472 顧客とは誰か?

№472 顧客とは誰か?
 「企業の目的と使命を考えうえで真っ先に考えるべき問いは、『顧客は誰か』である。」(ドラッカー「マネジメントⅠ」216頁)
 
 農業や製造業など原材料の生産に携わる企業者は往々にしてマネジメントの意味を忘れていることがある。農民は作物を作るだけ、製造業は部品を作るだけという具合だ。しかし、自社の製品がどこで使われており、使われている現場では何が不足しているかを絶えず追及し、マネジメントを意識する必要がある。
 
 ドラッカーの言う「自社にとって顧客とは誰か?」とは重要な問いだ。製造業の部品は通常は大手メーカーに納入される。上場企業からの発注を獲得すれば、億単位で受注をえることもある。その場合の顧客は上場企業だろう。しかし、さらに「顧客とは誰か?」という問いを追及する必要がある。
 
 すぐれた事業者は企業の中の誰が部品の必要を判断しているかを考えるだろう。
 この場合の顧客とは大手企業の技術部門の技術者、つまり、部品の採否を事実上決定するセクションと言うことになる。そのセクションが何を求めているか、どのようなウォンツがあるかが重要と言うことになる。
 
 ある企業は、営業担当者が大手企業に営業をしかけた際に、自社の技術者を同行させた。そして、大手企業の技術部門と懇談し、その技術部門にどのような欲求があるかを聞き出すのに成功した。それによって、億単位の受注を獲得している。
 
 さらに、自社の部品によってできあがった製品が誰によって購入されているかを知ることも必要だ。この場合の顧客は最終ユーザーだ。あるイタリアの中小企業は、自社のメッキ薬品が使用された自動車がブラジルで販売されていることを知った。ブラジルは高温多湿で金属が腐食しやすい。そのための特殊な塗料が求められていることが分かった。
 
 そこで、この企業は関連企業と共同研究を始め、ブラジルなど高温多湿地域での耐性に優れた薬品を開発してEUを初めとした世界の自動車メーカーに売り込みに成功した。この場合の顧客とは最終ユーザーとなる。
 
 かように、事業者にとって、顧客とは単純なものではなく、「ウォンツ」の源泉が顧客ということになる。