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№1089 上海経済事情 (4) 「ローカル企業との共同の道」

№1089 上海経済事情 (4) 「ローカル企業との共同の道」

5. 成長するローカル企業
 今回のツアーのもう一つの目的は長江デルタ及び周辺地域のローカル企業の成長ぶりだ。日系企業からの聞き取りによれば、かなり向上しているという。実際に日系企業から注文をとっている部品メーカーも存在する。

 もちろん、こうした企業はまだ一部に過ぎず、依然日本の部品メーカーの優位性は変わらないようだ。雷先生に言わせると、マネジメントに対する意識が十分でないということのようだ。機械設備は既によいものをもっている。安い労働力も存在する。あとの違いはマネジメント能力だという。従業員が定着して技術や経験が蓄積し、よい品質を作りあげ、納期を確実に守ると言ったマネジメントの基本的なあり方に問題があるようだ。

 しかし、一部ではあるが中国若手実業家の中には企業マネジメントに対する関心も高まっている。この点については上海の弁護士からも聞き取りを行ったが、新世代と創業者世代のギャップはかなり存在するようだ。

 ともかく、企業が持続的であるためには明確な理念を持ち、事業が社会から受け入れられる必要があることはマネジメントのイロハのイだ。中国の実業家たちがこれに気づくことは時間の問題だろう。

 こうした時に、あるいはこうしたときに備えて中小企業は何をするべきかを考える必要がある。さらに高い技術を作りあげていく、高度なマネジメント実現する、市場に対してできるだけ食い込んで彼らの進入を防ぐ、彼らと共に儲かる仕組みを作りあげて共生のシステムを作りあげる、いろいろあるだろう。

6. 海外対応、海外共同の道
 現在中国の中小企業の進展は著しい。天津でも上海でもローカル企業は急激に大きくなっている。彼らは十分利益をあげ、十分な機械を購入し、十分な人員を管理している。技術についても既に一定の水準に達している。日本企業から注文を受けている企業も少なくない。

 それにしても彼らの課題は依然技術であることに変わりない。また、ローカル企業の現場を見ていないので正確なことは言えないが、今回の上海ツアーで得た情報を総合すると、ある程度の水準に達した彼らの課題はマネジメントの水準にかかっているようだ。

 同じ5Sを掲げても日本企業の水準とは違う。アルミ部品を鋳造するにしても、複雑な形状はできない。不良率もそれなり高い。ジャストインタイムと言っても、日本の水準と中国の水準は違う。このあたりのマネジメント能力の差が今の中国の先進中小企業と日本の中小企業との差となって現れている。

 ここで考えるべきは2つの選択肢だ。
 ① ひとつはあくまでマネジメントの優位性を武器に中国企業との対抗関係に立っていくか。
 ② もう一つは、マネジメントの優位性を武器にある種の協同関係を作りあげていくか。

 もちろん、この①、②は二者択一という訳ではないだろう。基本的には自社の技術の優位性を武器に中国ローカル企業と競争していく路線は変わりない。それは国内にあろうと、国外に進出しようと同じ事だ。しかし、必要に応じて彼らの到達点を利用していくことも可能だ。

 私の勝手な考えだが、共同する際に利益の源泉を確実に押さえていくことでさらに発展が見込まれることがあるのではないだろうか。ある衣料品メーカーは中国に発注していた。徐々にその量は増えていき、ついに100%中国に発注をするようになった。メーカーと言いながらまるで商社のようになっていったのである。このメーカーは流通と技術(品質)を押さえているため、中国企業もこのメーカーから離れられなくなっている。

 つまり、共同とはお互い発展という点では美しいものだが、一方で明確な権益を確保するという点ではシビアな対決も含まれている。発展する中国企業とのつきあいはこうしたシビアな対決の中の共同にあるように思われる。