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№454 請求書

№454 請求書
 最近、ある請負代金の回収事件の依頼を受けた。
 請負工事では、当然ある程度の利益を上に載せて請求する。注文者側では、どうせかなり利益を見ているのだろうと考えて値引きを求めてくる。
 
 一番、問題なのは工事が終わってからさらに値引きを求める例だ。人によってはかなり厳しい値引きを求めるので、この人はサディストではないかと思うときがある。法律の原則からすれば、最初に決まったときの契約が契約だ。
 
 依頼者といろいろ協議して、取引先に弁護士名で内容証明郵便を送ることにした。
 それはともかく、請求書や内容証明郵便についてはしばしば誤解がある。一番、多い誤解が、請求書を出しているから時効にかからないという話だ。
 
 例えば、民法173条は「生産者、卸売商人又は小売商人が売却した産物又は商品の代価に係る債権」については2年で時効消滅すると定めている。
「運送賃に係る債権」は1年で消滅する。
 
 時効消滅の可能性を話すると「請求書を出していますよ」という返事があることがある。しかし、請求書を出しても時効が中断することはない。
 
 内容証明郵便にも誤解がある。
 内容証明郵便に法律上の特別な意味はない。
 例えば、内証証明郵便で送っても、中断することはない。
 
 内容証明郵便というのは、効力は普通の手紙と同じだと考えて良い。どこが違うかというと、発送したということが証明できる点だ。請求しても、そんなのは知らないと言われたら証明しなければならない。普通は証明が難しいので、内容証明郵便を利用するのだ。
 
 もちろん、請求書はいろいろ意味がある。
 日本のように、契約書を作らない社会では請求書は契約内容を証明する重要な証拠となる。請求書を出して、「来月まで待ってください」と言われれば、債務の承認になって、時効は中断する。日本では請求書の意味が裁判での大きな攻防になることが少なくない。