名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

名古屋,豊橋,東海三県中小企業法務を行っています。

№2436 弁護士費用は請求できない?

 弁護士費用はけっこう高い。500万円請求すると着手金で40万円ぐらい,報酬で50万円ぐらい,5000万円請求すると着手金で100万円から200万円ぐらい,報酬で300万円から500万円ぐらいとなる。依頼者からはこれは相手方から取ることできないのかとよく質問される。しかし,特別な場合を除いて,答えはノーとなり,私たちとしても心苦しい。例外的に請求できるというのはどのような場合だろうか。

 

名古屋E&J法律事務所へのお問い合わせはこちら

不法行為や労働事件では一部では認めている

 我が国の民事訴訟法では弁護士を強制していない。また,弁護士費用の敗訴者負担も採用していない。そのため,古くから弁護士費用を相手方に請求できるかは論争になっている。

 交通事故など不法行為による損害賠償請求の場合,裁判における弁護士費用は損害の一部として認めている(最判S44.2.27判時548号19頁)。だいたい認容額の1割程度が損害の範囲となっている。実際の弁護士費用は1割では足りないので全額が賠償されるわけではない。

 

契約責任にかかわる事件では否定されている

 貸金返還請求など金銭債務の場合は,遅延損害金といって年3%の割合の金額が賠償金決められているため,それ以上の賠償金として弁護士費用は請求できないとされている(最判S48.10.11判時723号44頁)。

 土地売買契約でも否定されている(R3.1.22判時2496号3頁)。裁判では契約上の給付を求める裁判となるため,売買契約上弁護士費用の請求まで入っていないことから,弁護士費用を請求できない。

 

請求したければ契約書にきちんと記載しておけと最高裁は考えている。

 不動産売買でも難しいものから簡単なものまである。契約書さえ出してしまえば勝つような事件に弁護士費用まで負担させるべきではない,そんなのは自分でやれと最高裁は考えている。

 弁護士費が入らないと解決しない難しい事件もあるが,そういう難しい事件は,きちんと契約書で予防線を張っておけと最高裁はいっている。

 

契約書はとても重要

 企業家でも契約書軽視している例が多い。記載一つで,数百万円,時には数千万円の違いが出ることを経営者は心するべきだ。

f:id:lawyer-kago:20210112233203j:plain