№1611 最低購入額の定めの有効性
最低購入額の定め
継続的取引契約では最低購入額を定めることがある。たとえば,次の契約条項はどんな意味があるだろうか。
「乙は,最低購入額を上回る購入を行うことにより,甲から技術情報の提供を受けることができる。」
この条項は一種のライセンスを相手に供与する代わりに,相手に年間1000万円とかいった数量を購入する義務を課す内容となっている。
「甲は,乙に対し,本契約締結の日から1年間を初年度として,○○の買取数量を以下の通り保証する。」
この条項はたとえば,一定額投資してプラントなどを導入するので,その代わりに一定期間必ず一定量発注するという合意をするというような場合だ。
最低購入額の定めも案外不確かだ
こうした,最低購入額を定める条項は法律上一定の効力を持つ。しかし,どんな効力を持つかを定めておかないとせっかくの条項も絵に描いた餅になる。一般的には最低購入量,最低発注量を下回る場合には契約を解除できるとような条項が存在する。
ところで,一定量購入しなかった場合,損害賠償請求はできるだろうか。つまり,購入量,発注量が実現されていれば得られたであろう利益というのは賠償の対象になるだろうか。
最低購入額条項違反の賠償額も定めておきましょう
こうした,逸失利益については契約書の中にきちんと賠償額算出の定めをしておかないと,認められない可能性がある。
東京地裁H25.12.4判決(判時2245号52頁)は,契約書の中に,賠償額の定めがないことから認めなかった。原告は最低購入量が決められていたのだから,最低購入量の売買代金相当額を請求したが認められなかったのである。
判決は次のように述べ,請求を否定した。
「本件ライセンス契約,本件基本契約のいずれにおいても,本件商品について個別契約の締結が予定されていたから,上記各契約に基づき,原告が被告に対し,最低購入額相当分の売買代金債務を負うことにはならないというべきであるし,上記各契約には,原告が上記賠償義務を負うと明示的に規定した文言はない。」
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「以上によれば,原告が被告に対し最低発注数量や最低購入額を充足する本件商品を発注しなかったとしても,それにより原告が,損害賠償義務を負うとは解することができない。」
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