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№2399 COVID-19と納期の遅れ

 COVID-19によって世界的に経済の麻痺状態が続いている。部品,材料が手に入らない,陽性者や感染者が発生しために生産や建設の現場の一時閉鎖を余儀なくされたなどといった問題が生じている。結果として納期が遅れてしまうということになる。このような場合の法的責任はどのように処理されるべきだろうか。あるいは,こうした問題を防止するために契約条項はどのように工夫されるべきだろうか。

 

 契約上はCOVID-19による危機管理に関わる内容を双方合意しておくことが望ましい。つまり,COVID-19によって生じる危機が不可抗力として責任のない現象であるかどうか,契約を履行できないことについて責任があるどうかについて,どのように危機対応するか当事者双方で協議しておき,議事録や契約書という形で残しておくべきではないかと思う。

 

  例えば,「当事者双方は正当理由ある場合は納期の変更を求めることができる」というような条文を作り,「」COVID-19に関する当事者双方が合意した危機管理の方式に対して,当事者が適切に対応した場合には正当理由があるものとする」というような内容がよかろうと思う。この点はさらに詳しく検討する必要がある。

 

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東京地裁平成28年4月7日判決はこうした問題を扱う上で参考になる事例の一つだ
 原告は被告よりマンション建設を請け負ったが,納期に間に合わなかった。しかし,原被告の契約書には「正当な理由があるときは,被告に対してその理由を明示して必要と認められる工期の延長を請求することができる」という条文があった。

 

 判決は,本件では正当理由があるとして,納期の遅れには「正当な理由」があるとして納期の遅れについて,原告の責任を否定した。また,逆に遅れを取り戻すために工期の短縮を求められため,工期短縮による費用増加部分について注文主である被告は原告に対して支払うよう命じた。

 

判決は経済現象の異常な変化を「正当理由」と判断した
 「ここで正当な理由とは,上記本件約款28条(5)の趣旨に照らして,契約時に予測することのできなかった請負者(原告)の責めに帰することができない工事上の障害,工期内に工事を行うことができないこととなる理由のことであり,天災などの自然的条件のほか,予期できない品不足などの経済現象の異常な変化があり代替策を採ることができなかった場合等の不可抗力もかかる理由に当たると解される。」

 

震災による生コン不足も「正当理由」とした

 判決が示した正当理由には種々あるが,東日本大震災による工事の中断をあげたほか,震災による生コンの不足も正当理由にあたるとした。

「震災の影響で生コンの出荷が停止されている旨報告していることが認められるから,この点については不可抗力として原告が被告に対して工期の延長を求めることができる正当な理由があるというべきである。」

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